『モルモット・オルガの物語』マイケル・ボンド/おおつかのりこ(訳)

 

モルモット・オルガの物語 (みちくさパレット)

モルモット・オルガの物語 (みちくさパレット)

 

 

モルモットのオルガがペットショップを出て、オガクズ夫妻と一人娘のカレンちゃんと暮らすようになったとき、自分の本当の名前をみんなに知らせる必要があった。別の名前を付けられちゃう前に。
だって、オルガの本当の名前はオルガ・ダ・ポルガで、名前を変えるつもりなんかなかったから。


居心地のよい小屋に住むオルガは、世間知らずのお嬢様。食いしん坊で、尊大で、自慢屋で、でもなんだか憎めない可愛いモルモットの女の子なのだ。
小屋の外の広い世界を知らないけれど、持ち前の想像力を駆使して、外からやってくる友人たちにたくさんのお話を語って聞かせる。それは偉そうに。
この本のなかには、オルガが語るお話がいくつも出てくるけれど、どれも楽しい。そして、モルモットはいつも偉大。
モルモットにしっぽがない理由は、オルガのお話でよくわかったし。
態度も大きいけれど、彼女の想像の世界はいきいきとして、スケールだって大きいのだ。友人たちの知っているリアルな外の世界がむしろ貧相に思えてくるほどに。


本のカバーの折り返しに記された作者紹介によれば、
「主人公の「オルガ・ダ・ポルガ」は、娘のカレンのモルモットがモデルになっている」
とある。
そうだったのか。
たとえば脱走してしまったモルモットのことを心配したり、コンテストに出そうとがんばったり、時にはけがをさせてしまったり・・・動物と暮らしながら実際に経験したにちがいないあれこれの事件から、きっとこのお話はうまれたのだ。
オルガのなんともいえないかわいらしさは、作者の娘の似姿かもしれない、と想像したりする。
オルガのなかには、こまっしゃくれた愛すべき小さい人の姿がみえるもの。


わたしは、オルガの口からぽろりとこぼれる諺やスローガンが好きだ。
「いま口のなかにあるシロツメクサは、しばふにはえているシロツメクサふたくちぶんのねうちがある」とか。
「たくさん食べて少しだけ考える」という彼女のスローガンには、強く共感するものである。