『マローンおばさん』 エリナー・ファージョン/エドワード・アーティゾーニ

 

マローンおばさん

マローンおばさん

  • 作者: エレノア・ファージョン,エドワードアーディゾーニ,Eleanor Farjeon,Edward Ardizzone,阿部公子,茨木啓子
  • 出版社/メーカー: こぐま社
  • 発売日: 1996/10/25
  • メディア: 単行本
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本棚から、大切な小さな本を出してきた。


マローンおばさん。
ある冬、夜ごとに、動物たちがやってきて、マローンおばさんの家の戸を叩く。
その都度、繰り返されるマローンおばさんの言葉は、「あんたの居場所くらい ここには あるよ」
歌うような繰り返しに、からだを揺すられているようで、心地いい。


マローンおばさんのところにやってくる動物たちは、弱り果てたスズメ、棒きれのようにやせこけた猫、それから、それから……
みんなみんな取るに足らないくらいの小さな動物たちで、傷つきながら、飢えながら、雪の日にほかにどこにも居場所をみつけられなかったのだ。
どんなにしんどい道をたどり、今日まで命をつないできたことだろうかと、そのぼろぼろの姿を見て思う。
そして、彼らを迎えるマローンおばさんはどういう人だったかといえば、やはり、彼らの仲間だった。
貧しくて、ひとりぼっちで寂しくて、誰からも顧みられることのない人だった。
まがりなり住む家はあったけれど、それだけではたぶん「居場所」じゃなかった。


マローンおばさんは、居場所のない者に喜んで居場所を与えた。何も見返りを求めたりはしなかった。
それは、マローンおばさん自身が、自分の居場所を与えられることにもなっていたようだ。そんなことちっとも望んでいたわけではなかったけれど。
マローンおばさんは、スズメを家にいれてやったとき、こんなふうに考えていた。「仲間がいるとは うれしいね!」
挿し絵のマローンおばさんは、両手で、なんと愛しそうに(そして幸せそうに)スズメをくるんでいることだろう。


居場所って何かなあ……
心許せる友だちと一緒にいられることだろうか。
もてるものや時間を、だれかと分かち合えることだろうか。
この本を開くとひたひたと満ち満ちてくるものがある。これのことだろうか。


だけど、まず、この一冊が格別の居場所なのだ。
ファージョンの詩と、アーディゾーニの絵とが、ぴったりと合わさって美しい、小さな小さな本。
この本は、両手を広げて、このわたしに(それからあなたに)「あんたの居場所はここにあるよ」と言っているようだ。