『木の葉つかいはどこいった?』 ビーナ・イラーチェ(文)/マリア・モヤ(絵)

 

木の葉つかいはどこいった?

木の葉つかいはどこいった?

  • 作者: ピーナ・イラーチェ,マリア・モヤ,小川文
  • 出版社/メーカー: きじとら出版
  • 発売日: 2015/08/24
  • メディア: 大型本
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つい最近まで「いったいいつになったら涼しくなるんだろう」と汗を拭いていたというのに、うちも、とうとう庭の落葉掃きが始まりました。いつのまにか秋が来ています。


さて、この年、すっかりいろづいて、あきのかぜとともにとびだす準備ができた葉っぱたちをかかえて、シダレヤナギの木も、マロニエの木も、スズカケの木も、リンゴの木、ブドウの木、そのほかたくさんの木たちも、心配していた。
いくら待っても、木の葉つかいが来ないのだ。葉っぱたちに飛び方を教える木の葉つかいが。
木の葉つかいが来なければ、葉っぱは全部いっぺんにどすんと落ちてしまうだろう。


木たちは、春からずっと、葉や花や実の重みに耐え、夏の暑さをのりこえ、やっと落葉の季節を迎えた。
重そうなたっぷりの木の葉を頭にのせたまま、うなだれて腰を沈めている木たちの姿は、心痛む風情だ。(一面、ユーモラスでもあるけれど。)
やっと葉っぱたちを飛び立たせるというところで、こんな心労を抱えて……
木の葉つかいはどうしちゃったのだろう。


そのうち、一枚の葉っぱが、ついにじっとしていられなくなり、枝を離れた。
「わたし、たびがしたいの!」


葉っぱの夢見るたびがすてきだ。
そして、風に乗った葉っぱの姿がすてきだ。
続けてほかの葉っぱたちも次々と枝をとびたつ。


くるりとうえをむき、くうちゅうに わをえがく。
はじめは ちいさく、つぎに おおきく。
つづいて びゅーんと まっさかさま、くさのうえ すれすれに とんだかとおもうと、
ふたたび空へ、ぐるぐると うずを まきながら あがっていく」
なんてのびやかなんだろう。なんて気持ちがいいんだろう。


木の枝につかまって、とびだそうかどうしようか、と迷っている今年の葉っぱたち、あなたたちも、どうか飛んでいけますように。好きな時に好きな場所へ。
いつの間にか、見送る立場になってしまったわたしも、木だ。
最後の葉っぱのもうすぐの旅立ちを待ちながら、思っている。
ただ、よき旅を!