『ハルとカナ』 ひこ田中

ハルとカナ

ハルとカナ


ハルもカナも八歳。小学二年生。
「八年間も生きているのでもう、たいていのことはわかっているつもり」だけれど、小さい時には気にならなかったことに「なぜ」と思うことも増えてきているのだ。
それぞれが、日々のなかで「どうしてだろう」と思うことには、大人の私も、答えられないことが多い・・・というか、そういうこと気にかけないのだ。
いつもニコニコしている佐々木先生は、黒板のほうをむいているときにもニコニコしているのか。
お母さんが、子どもというものは勉強をきらいなのだと思いこんでいるのは、どうしてだろう。
幼稚園のころは混ざり合って一緒に遊んでいた男子と女子なのに、今はどうして、男子どうし、女子は女子どうしでかたまっているのだろう。
・・・
何かを不思議だと思いはじめたことが、何か(だれか)を好きになる事の始まりかもしれない、と思うと、「なぜ」「どうして」という言葉がちょっと愛おしくなってくる。


子どもたちの気持ちを、ゆっくりとていねいにすくいあげていく言葉を読んでいたら、
小学二年生にもう一度もどれないものか、と一瞬まじめに思ってしまった。
不思議を不思議と素直に思えるとき。それについてゆっくりと考えられる時間。
大きくなって忘れちゃってもいい。
そうした時間をすごす子は、そのとき、(不思議に思う)人や物を、ほんとうに大切にしているんだろう、と思う。
作者の筆は、子どもたちの時間を丁寧に描きながら、大切に守っている。