10月の読書

2016年10月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:2408ページ

自分ひとりの部屋 (平凡社ライブラリー)自分ひとりの部屋 (平凡社ライブラリー)感想
「創造の業を成就するためには、精神の女性部分と男性部分の共同作業が欠かせません」男性と女性がほぼ対等にならなければ、共同作業なんて不可能だ。男性の価値観ばかりが幅を利かせる文学の世界は歪だ。だから、「女性と文学」について語る。シェイクスピアの妹(架空)は、多くの女性たちの中に生きているのだ、と著者はいう。彼女を大切にしたい、不幸にしたくはない。
読了日:10月30日 著者:ヴァージニアウルフ
孤独な鳥はやさしくうたう孤独な鳥はやさしくうたう感想
スーダンハルツームで出会った青年が教えてくれた歌や美しい場所は、彼だけにしか聞こえない、見えない。そういう歌を聴いている人はきっと幾人もいるんじゃないか、と思った。もしかしたら、旅人である著者もまた聴いている。見ている。抱いている。この本は、著者の抱いているものと、相手の抱いているものとが触れ合った時、共鳴して鳴る美しい音楽のようだ。
読了日:10月27日 著者:田中真知
ジョイランド (文春文庫)ジョイランド (文春文庫)感想
ジョイランドが醸しだす胡散臭さや仄暗さ、客とスタッフとが共犯者のように支え合いながらの祭りは、沁みるような味がある。長い時間をかけて解決した一つの事件に、私は、驚いたり、ほっとしたりしながら、大切な物を失ったような小さな痛みを感じる。それでもなお、物語は、色あせることなく輝いている。回想の中の若い日々こそ、そのまま「遊園地」と呼びたい。
読了日:10月24日 著者:スティーヴンキング
子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)感想
孤独でいる時間に、子どもたちは、自分の外にある世界と、心のうちにある世界とを、意識的に一つに統合し、内的成長をとげる。うしろにさがり、ひとりの時間を大切に見守って居るような大人が子どものそばにいたらいいのに。それがますます困難なこの頃ではあるけれど、私自身が私自身の孤独を充分大切にしながら、人の孤独に敬意をはらうことができたらいいと願う。
読了日:10月21日 著者:エリーズボールディング
手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) (小学館文庫)手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) (小学館文庫)感想
歌集の読み方なんてわからないから、物語を読むように読んでいる。ドキッとしてその歌に蓋をしたくなったり、両手で水を掬うように小さな体をそっと手に掬いあげてやりたいと思ったり、ころころと変わる気分が鮮やかな色の氾濫のようで眩暈がしたり。澄んだ音色を響かせながら、気ままに飛び回る妖精のような娘が、わたしのなかに引っ越してきた。ウサギ連れで。
読了日:10月18日 著者:穂村弘
白い犬とワルツを (新潮文庫)白い犬とワルツを (新潮文庫)感想
まるで幻のよう、夢のような犬とサムの時間が、かけがえのない美しい絵のようだ。犬はいったい何者なのだろう。何者でもいいじゃないか。人でもいぬでも、他の動物でも・・・。姿は関係ない。どんな姿をしていてもいい。一緒にいたい、心を通い合わせるそれがそこにあることに感謝したくなる。
読了日:10月17日 著者:テリーケイ
プーさんと であった日: 世界で いちばん ゆうめいな クマの ほんとうに あった お話 (児童図書館・絵本の部屋)プーさんと であった日: 世界で いちばん ゆうめいな クマの ほんとうに あった お話 (児童図書館・絵本の部屋)感想
おはなしは続く。絵本のおはなしがおわり、今度は読者のあたらしいお話が始まるんじゃないだろうか。「なにかとくべつなものをかんじるぞ」が合言葉。この言葉が私たちの暮らしの中にもあるかもしれない。きっと、あたらしいお話はもうはじまっている。絵本をとじても、微笑みがとまらない。
読了日:10月15日 著者:リンジーマティック
僕とおばあさんとイリコとイラリオン僕とおばあさんとイリコとイラリオン感想
この物語が愛おしくてたまらない。すでに私はこの物語から帰りたくなくなっている。この物語の片隅に留まりたい。しかし、物語の主人公でさえも成長し、ここに留まることなんて許されない。色々な事件が起こり、大切な人々や動物たちもまた思い出になっていく。そして、ますます愛おしくかけがえのない風景になっていく。あの一場面も、あの一場面も、あの一場面も。
読了日:10月11日 著者:ノダルドゥンバゼ
船を見にいく船を見にいく感想
ぼくは港へ船を見にいく。船は見える物と見えないものとからできている。いつか「ぼく」はこの港から旅だつのだ。船が抱える記憶や気配をそのまま受け入れ、ぼくそのものを(港へ残していく人たちの思いとともに)船に託して、出かけるのだろう。いつか来るその日が佳き日でありますように、と願いながら、わたしは、「ぼく」と並んで船を見ている。
読了日:10月9日 著者:アントニオ・コック
おいぼれミックおいぼれミック感想
誰かに指摘されて自分の考え方を変えることは、本当に難しい、と思う。しかし、相手の(あるいは自分の)無理解がいったいどこからきたのか知れば、考え方以前のもっと深いところを理解することができれば、そうしたら何か別の視点が生まれるのではないか。差別、という一言で片付けてしまうことが、差別をより硬く固めてしまうのではないか、とも思った。
読了日:10月7日 著者:バリライ
独り居の日記【新装版】独り居の日記【新装版】感想
雨が降っている中で始められた文章は、秋でも冬でも、そして明るい陽射しの春であっても、どこかに静かな雨の音を含んでいるような気がする。わたしはそれが心地よい。晴れやかに暮らしていたら気がつくことのできなかったもの、ことに自分のなかに眠るものたちと、静かに対峙できる。孤独が友となる豊かな時間が愛おしい。
読了日:10月5日 著者:メイ・サートン
台湾生まれ 日本語育ち台湾生まれ 日本語育ち感想
日本語を思考の杖にしながら、中国語、台湾語、言葉の世界を旅し、自分が何ものなのか探し続ける。三つの言語のどこにも確かな居場所がない、というのはなんと不安なことだろう。言葉は生きもののよう、言葉は命に近い感じ。最後の章「終わりの始まり」で、著者の新しい文学が生まれ始めている感じがいい。この生き物は、今後どのように成長していくのだろう。
読了日:10月3日 著者:温又柔

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