1月の読書

2015年1月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:2484ページ

ブロード街の12日間ブロード街の12日間感想
現実に起こった出来事、実在した人びと。その間に、作者によって送り出された人々。そこにミステリが立ち上がり、冒険が始まる。人びとは命を与えられ、古のロンドンは色づき、匂いも音も、鮮やかに蘇る。善意の大人の手助けで、少年が、科学に目覚め、魅了されていく過程が印象的で、心に残っています。
読了日:1月30日 著者:デボラホプキンソン
金素雲『朝鮮詩集』の世界―祖国喪失者の詩心 (中公新書)金素雲『朝鮮詩集』の世界―祖国喪失者の詩心 (中公新書)感想
原詩が書かれた時代を思い浮かべ、訳されなかったその心もまた思い浮かべてみる。美しい詩の文字の並びのその横に、ないはずの空白が、見えてくるような気がする。そこにきっと訳されなかった心がある。日本人の私にはきっとわかりきれない深くて大きな「恨」に昇華した言葉がそこにあるに違いない。文字になった言葉より重く。
読了日:1月27日 著者:林容沢
ハルムスの世界ハルムスの世界感想
物語そのものの不可解さ、不気味さよりも、不自然なまでに折りたたまれて物語に詰め込まれた不安のほうが気になる。このような笑いを笑うことが苦痛だ、と感じるほどに、最近、現実世界も息苦しくなってきたから。最後のコラムの90歳老婆の突拍子もない回想記(?)の話が素敵で、ここでやっと心から笑うことができた。
読了日:1月20日 著者:ダニイルハルムス
木に持ちあげられた家 (Switch library)木に持ちあげられた家 (Switch library)感想
バートンの『ちいさいおうち』を思いだす。 『ちいさいおうち』は幸福なホームだった。その思い出をずっと抱きつづけていられた。けれども『木に持ちあげられた家』は、最初から寂しかった。この家は、ホームになることができなかったのではないか。今度こそ小鳥や栗鼠のホームになるかもしれない。そうだったらいいと思う。
読了日:1月18日 著者:テッド・クーザー(著),ジョン・クラッセン(絵),柴田元幸(訳)
光の子供 (新潮クレスト・ブックス)光の子供 (新潮クレスト・ブックス)感想
やりきれない閉塞感は、今まさに「光の代役」を入手し、それがあくまでも代役であること、本物にはなりえないことを知りながら、溺れ流されていく感じ。物語は静かだ。ゆっくりと流れる。モノクロのサイレント映画のよう。暗い場面ばかりなのに、光が印象に残る映画。光の場面が光ゆえにやりきれない、と思わせる映画のようだ。
読了日:1月16日 著者:エリックフォトリノ
アネネクイルコ村へ―― 紀行文選集 (大人の本棚)アネネクイルコ村へ―― 紀行文選集 (大人の本棚)感想
サバタ、トロッキーフリーダ・カーロ。あまりに物を知らない自分を恥じ、著者に申し訳なく思う。でも、このような紀行文を読むのは、人に会いたいからだと思う。偉大な名を訪ねる旅は、多くの名もなき人びととの一期一会の出会いの積み重ねだった。その出会いが重なって一つの風景になっていく。
読了日:1月14日 著者:岩田宏
さようなら、オレンジ (単行本)さようなら、オレンジ (単行本)感想
アゴタ・クリストフの自伝『文盲』を思いだしていた。母語を失うということが、その人のアイデンティティをゆるがす。ことに「書く」ということ。「書く」ということが生きる、ということに直結していく。「書く」ことを習得するということは、自分をこの地に生かすための戦いのようだ。
読了日:1月11日 著者:岩城けい
雪の中の軍曹雪の中の軍曹感想
厳寒、豪雪に体を引きずって歩き続ける敗走の記録。後から振り返れば、改めて語ることさえどうしてもできないような出来事にいくつも遭遇した。ただ生き延びたことだけが奇跡ではないか。綺麗事のはずがない。それでも思ってしまう。どうしようもない泥沼に沈みながらも、天の星を仰ぎ見ることができる人は確かにいるのだろう。
読了日:1月10日 著者:マリオリゴーニ・ステルン
ムーン・ジャンパームーン・ジャンパー感想
美しい絵本だった。月明かりに照らされて遊ぶ子どもたちの姿も夜に滲むようでやわらかい。まるで妖精みたいに遊ぶじゃないか。なんて楽しそうなんだろう。私もそこにまざりたい。まざれないなら、私は彼らの両親になりたい。窓から、夜気と子どもらの声とを風景のように味わいながら、一日の終わりをゆったりと過ごしたい。
読了日:1月8日 著者:ジャニス・メイ・ユードリー
逃亡派 (EXLIBRIS)逃亡派 (EXLIBRIS)感想
本を開けば、百以上もの断章がいっせいに移動を始めるような感じ。こういうの好き。移動が集まって、どこへ向かうのだろう。向かう場所なんてきっとない。ただ移動していく。何のために? もしかしたら止まることを実感したくて移動し続けているのではないだろうか。移動することで自分の存在を確認するということもあるかな。
読了日:1月7日 著者:オルガトカルチュク
山の人生 (角川ソフィア文庫)山の人生 (角川ソフィア文庫)感想
現在、深い山はあっても、底が知れないと思うことはあるのだろうか。普通に暮らす人びとの里のすぐその地続きに。今、さらに新しい物語が必要になっているような気がする。もしかしたら、静かに生まれ出ているのだろうか。この本を読みながら、先日読了したばかりの梨木香歩の『海うそ』を重ねていました。
読了日:1月5日 著者:柳田国男
銀のうさぎ (新日本少年少女の文学 23)銀のうさぎ (新日本少年少女の文学 23)感想
物語の中にあるのは、生活の過酷さや厳しさだけではない。深い叡智のようなものが、彼らから放たれて、物語を読みながら私は照らされている。眩しい光も底知れぬ闇も、何の気負いなく身内に湛えて生きていく人たちの生活は、私などが理屈をこねくりまわして辿りつけない深い豊かさがあるのだと思う。
読了日:1月1日 著者:最上一平

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