バウンド −纏足

バウンド―纏足 (YA Dark)

バウンド―纏足 (YA Dark)


ドナ・ジョーナポリのシンデレラは、中国が舞台です。
もっとも、金原瑞人さんによる「訳者あとがき」によれば、「シンデレラ」の原型は中国にあった、とするのが、定説なのだそうです。知らなかった。


継母にいじめられるシンシンと、纏足に苦しむ姉のウェイピン。
早とちりのわたしは、「纏足」というタイトルから、纏足ではない大きな靴に合った大きな足の花嫁を探す物語に違いない、と思っていました。
・・・あまりロマンチックじゃないなあ。そうそう、まったくの早とちりでした。(ちなみにわたしは足がでっかい)


明の時代の小さな北の町です。儒教を根っこにした道徳観や暮らし方などが、読めば読むほどに伝わってきます。
親に孝行し、先祖を尊び、狭量な継母にも素直に仕え、礼儀正しく控えめであろうとする主人公。それを美徳と考える背景。
まして、王子さまと結ばれる、というラストに向かうならば、主人公はさらに儒教的(?)美徳に磨きをかけるしかないのではないか。(でも、それでは、ちっともおもしろくない。)


主人公は変わっていきます。
辛い体験、怖ろしい体験を経て、惨めさを乗り越えて、強くなっていく。雲が晴れて、青空が広がるように。

>もうだれにもだまされない、そう自分に誓った。自分が強くなった気がした。「強い女」というのは、私が生きているこの世界では否定される。でも、私は否定されない。霊媒師みたいに炎の中に跳びこんでも燃えない気がする。
そうそう、それでこそ魅力ある主人公だ。
でも、そうなったとき、この主人公にとって、「シンデレラ」のラストはどのような意味があるのでしょう。
彼女は、強く変わっていくことで、「王子様との結婚」はハッピーではない、と悟ってしまいます。
(強くなってしまった彼女にとっては皮肉にも思える)この時代のごく普通の娘にとっての「最高の幸せ」をどのような形で受け入れるか、という興味が膨らみます。
片方の靴をもって、この国の皇太子が近づいてくる・・・


最後の一文に、はっとします。
○か×か、○か×か、そればっかりに気を取られて緊張していた自分の気持ちがゆるゆると解されたよう。
思えば、纏足とはなんと意味深長なタイトルだろう。包帯でぐるぐると締め付けたのは女性の足先だけではない。
納得のいくやわらかな終わりかたが気持ちよい。