イスラム飲酒紀行

イスラム飲酒紀行

イスラム飲酒紀行


イスラム圏では飲酒はご法度。当然、酒の売買は禁止。持ち込むことも禁止――


カタールパキスタンアフガニスタンチュニジア、イラン、マレーシア、トルコ、シリア、ソマリアバングラデシュ
著者高野秀行さんが訪れた国の中でも、この本で取り上げられているのはイスラム圏の国である。
何をしにいったのか?
もちろん、酒を飲みに・・・珍獣だか何かの取材らしい。
そして、そのついでに、酒好きな著者としては、たとえ禁酒の国であったとしても、ダメモトで酒でもさがしてみようかなぁ、と思ったのだろう。


そうだっけ???


本人は、自分はアル中ではない、とおっしゃる。ほんとうだろうか。
だって、もうずーーーーっと酒、酒、酒、なのである。
一日だって酒なしではいられない。呑みたいとなったら、今の今でなければダメ。
そんな人がなんで、こんなところへ行くのだ、とあきれてしまうのだが、
どんな場所だろうが、蛇の道は蛇。
ある場所にはある、こっそりひっそりと酒は造られ、売られ、たしなまれていた。あくまでもひっそりと。
それを、あらゆる手段を使って探すのであるが、その熱心さには、あきれつつも感服せずにはいられない。
…気の毒は、巻き込まれる同行者である。
ことに、酒などほとんど呑まないという相棒の写真家森清さん(沢山のすばらしい写真がこの本に収録されている、臨場感高まる)かわいそうすぎる。


非合法のもの(とはいえ麻薬とかとは違うから^^)を求めて、そのためのツテを求めて、彷徨う著者の、上がり下がりの激しい自分勝手なテンションに笑いに笑う。

>私が本当にやりたかったのは一番ふつうのこと、つまり「現地の人たちとわいわいがやがや飲む」ということだったのだ。
いやいや、それが一番普通じゃない国なんでしょ、そこは! とおかしくなってしまうのだけれど、
探せばあるのだ、わいわいがやがや飲めるところ。
怪しげな場所も、怪しげな人々もたくさん出てきたけれど、印象的なのは闇夜のオアシスバーである。
沙漠のオアシス、小さな森の深夜、まるで闇鍋のような酒盛りがある。(見えないということは天国だ。見えたときには地獄だ?)


だけど、笑っているうちに、これはタテマエの世界から外れた一種の異文化交流、と思い始める。
法や戒律で厳しく縛られているように見えるけれども、人々は上手に、のびのびと抜け道をつくるし、案外自由に、本音を語る。
人々の素顔は、陽気でくったくがない。義理堅くて親切な人が多かった。
彼らの懐に飛び込まなければ酒は得られなかった。酒が得られなければ、普通の人々の普通の顔も見られなかったのかもしれない。
・・・酒はよいよい。ほどほどに飲むのはよいよい。
だけど、著者様、ぜひとも休肝日をおつくりなさいますよう。


*BGMは、日本全国酒飲み音頭がいいかな^^