ご老人は謎だらけ

ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす (光文社新書)

ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす (光文社新書)


この本のタイトルを目にしたとき、最初に思い浮かんだのは身内の老人のことでした。
読んでいるうちに、なんだかくすぐったいような気持ちになってきて、
家族として、老人の気持ちをちっともわかっていなかった、
あるいは、その気もなく気持ちを萎えさせていたかもしれない、と思い当たり、
申し訳ないような、そうでもないような(笑)、ほっとするような・・・
ふふふ、
ほっとするような、と感じたのは、
いつのまにか、老人の家族の立場ではなくて、自分自身(いつかそうなる老人)のこととして読んでいたのでした。
老いるほどにポジティブになっていく、というシステム(?)に、単純にほっとしているのです。


老いることはそれほど悪くないよ、ねえ?
と、言えるためには、「どんな歳のとりかたをすればいいのか」にもよるのですよね。
理想は、やはり、「おわりに」に記されていた80歳のピアニストのアルトゥール・ルービンシュタインさんの言葉や、
風姿花伝』の言葉そのままに『時分の花』ではない『まことの花』を咲かせるための努力をすることでしょうか。
潔くも気持ちがいい。清々しい努力と思う。


それと、老人が老人として生きづらくなっているのは、周りの無理解にも原因があることは、
まだ老人ではないわたし(とわざわざ言うってことは、まさか、まさか^^)にも、思い当たることがたくさん。
社会のしくみもまた、中心にいるのが(老人ではない)若い人たちなので、
老人への支援が本当に必要な支援になっていないことなども。
バリアフリーには、ハード面とソフト面とがあり、ソフト面については見落としがちである、ということ。
今の介護制度にしても、自立できないから介護を受ける老人に「自立支援」というのは確かにおかしいと思います。


老年行動学がある、ということは、初めて知りましたが、
言われてみれば・・・と知ったこと、思い当たったこと、頷けることばかりでした。
そして、さらに思ったことは、老人が元気であれば、若い人たちも元気でいられるということ、
老人が活き活きした社会は、若い人たちも活き活きした社会なのだということです。
だって、同じ人間、老人だけ・若者だけが別個に暮らしているわけではないのだもの。


それからもう一つ、「高齢者」という言葉はただ状態を表しているだけ、
「老人」という言葉には、人の人生や感情までも籠められている、との指摘に、確かに!
よいことも悪いことも受け入れて、やっぱり堂々と「老人」と言う言葉を使いたいものだと思っています。