よぞらをみあげて

よぞらをみあげて

よぞらをみあげて


寝苦しい夜。
日本のこの地でこんな夜を過ごしたら、群がる蚊の餌食だなあ、といきなり現実的なことを言ってしまってすみません。
だけど、この子のまねができなくても、この絵本を枕辺において寝たら、安眠できそうな気がします。


女の子の眼下に見えるのは、アメリカの都市の下町、大きな川のある町です。
まだぽつぽつと明かりがともった建物。その先の大きな川には行きかう船なども見えます。
どこもかしこも知っているところ、見慣れた景色。
だけど、
昼間誰かと一緒にみるときとは、今は、ちょっとだけ違う景色のはず。


私も、この女の子になって、女の子の目で、景色を見まわします。
おだやかに満ち足りた気持ちで眺めている。
ひんやり、夜風も感じます。


それから、
徐々に目線は高く、遠くなっていく。視界は広がっていく。
視界ではなくなっていく。景色は遠くなるのに遠くない。
景色を体全体で感じているからです。
いつのまにか自分が夜の空気に混ぜあわされているような感じなのです。
夜の風になっているよう。
世界の一部になってしまっているよう。


少しにじんだやさしい水彩もいいな。
ここに自分がにじんでいくのはこんなにも気持ちがいい。


景色は煙り、より一層静かにやさしく・・・いつのまにか眠くなっていく。


気持ちがいいね・・・気持ちがいいね・・・


女の子の世界を壊さないように、そーっと見守るおかあさんがとてもいい。
最後のページが大好きです。
わたしは女の子? わたしはおかあさん?
私は眠っている? わたしは目覚めている?
どちらも気持ちがいい。満ち足りて、静かに夜はふけていく。