古井戸に落ちたロバ

古井戸に落ちたロバ (インディアンのティーチングストーリー)

古井戸に落ちたロバ (インディアンのティーチングストーリー)


「おはなし」なので、いろいろな場面にあてはめていろいろな受け止め方ができる物語だと思います。
わたしは、ロバとじいさまに、親子の姿を思い浮かべています。
じいさまの姿に、私自身を重ねています。


どこに、わが子を進んで生き埋めにしたい、と願う親がいるか。
それはそうなのだけれど、
子に良かれと思ってしたあれこれが、
結果として、わが子を追い詰めてしまったり、
気がつかないうちに、芽を吹きかけていた大切な何かを踏みにじっていたり、
そういうことに、あとになって、はっと気がつくことも・・・確かにあった。
ああ、かわいそうなことをした・・・と苦い思いとともに。


ロバの姿には目を見張るものがあります。
不安に泣き、助けを求めるだけのロバでした。
でも、助かる希望を自分の力で見出すのです。力尽きて、絶望しかけたその場で。
そして、希望にむかって地道な努力を続けるのです。
誰に頼ることもなく、自分の力で。
暗がりのなかで、単調な仕事を黙々と繰り返し、努力し続ける姿を見れば、胸がいっぱいになってしまう。


いつロバ(子)は変わったのでしょう。
人に頼り切っていたのに。絶望しかけていたのに。もう駄目か、と思ったのに。
こうなってしまった自分を憐れみ、じいさん(親)を恨んで滅びていったかもしれないのに。


希望を創りだす力を人は持って生まれてくるのでしょうか。


ほんのちょっと気持ちを動かすだけで、物の見方が変わり、絶望が希望に変わることもあるのかもしれません。
それに気がついた時、子どもは自分のなかに、状況を変える力があることを知るのかもしれません。
子は振り返らない・・・それでいいのだと思います。
振り返らずに歩んでいってほしい。力いっぱい歩いていってほしい。
もう、親は、子の先に立って歩くことはありません。