ツリーハウスをつくる

ツリーハウスをつくるツリーハウスをつくる
ピーター・ネルソン
日本ツリーハウス協会 翻訳
二見書房


木の上の(なかの)家、ツリーハウス。
こんな本があったなんて! そして、ツリーハウス・ビルダーなんて仕事も、あったんですねえ。
写真をぱらぱらと眺めているだけで楽しくて楽しくて。


秘密基地として、避難所として、セカンドハウスとして、アトリエとして、宿泊施設として、子どもの遊び場として、・・・
用途(?)はさまざまですが、それをわざわざ木の上に求める人たちだもの、
それぞれに籠められた大きな夢や思いがあり、一方ならぬこだわりがあるのです。
だから、どの人のどのツリーハウスも、その人らしい夢がこもっていて、全部素敵で、わくわくする。


次々に現れる印象的なツリーハウスたちと、オーナーたちの熱い思い。
どれもどれもすてきでしたが、特に好きだと思ったのは・・・


表紙にもなった「カエデの宮殿」は、想像力を縦横にはばたかせつつ、今なお増築中(?)、さまざまな仕掛けがいっぱい。
これは、外観だけみてもわくわくする。
あちこちにたくさんの嬉しい隅っこや仕掛けがあって、ほんとに秘密基地みたいです。
この先も少しずつ変容していきそうで、続きの物語を見てみたい。何よりそこへ行って探検したい。
思いだすのはハウルの動く城


「樹間の宝石」と名付けられたツリーハウスは、七方向に延びる幹のちょうど真ん中に納められた小さな家。
まるで、七本のゆびの中にそっと大切に包まれたようなかわいらしい小さな家。宝石、というのがぴったりです。
貝のなかの真珠みたいでもあるね。


フランス・アルーヴィルにある、がらんどうのオークの木の幹のなかに作られた教会。
ほんとにこんなのがあるのだ、と大興奮。しかも教会。それもちゃんと今も使われているなんて。
いったいどのくらい大きな木なのだろう・・・見当もつかないのです。
それにしても、この形の素朴なかわいらしさ。童話のなかの一場面のようで、まるで、森のリスや小人のおうちのよう。


そうして、わたしがこの本のなかで一番好きなのは、「森に浮かぶ船」と名付けられたツリーハウス。
16世紀の帆船をイメージにして作ったのだそう。内部までまるで船、なのです。
帆船が木の上、緑の枝に覆われている姿に、果てしない夢が広がる。うっとりしてしまいました。
この船は空に飛び立つのではないか・・・
思いだすのは絵本「みどりのふね」でした。


だけど、いくら巨木、とはいえ、こんな家を支えさせたら木がつらいのではないか、とちょっと心配にもなるのですが、
ツリーハウスをつくるにあたっては、まず樹木のことを良く知ることが大切なのだそうです。
樹木の性質を知り、ツリーハウスに適した樹木を選び、建てたあとのメンテナンスを大切にする。
それは、人と木とが互いに支え合い、ともに生きていく相棒になろうとしているようにも思えます。
木をいじめるような建て方はしたくない。と。


もしわたしだけのツリーハウスをつくるなら、どんな感じにしたいかな、と考えると無限に夢がふくらむ。
想像するだけで、森の湿ったいい匂いに包まれているような気持ちのよさです。