Hana_3今月はダントツで、『引き出しの中の家』(朽木祥)です。この本には本当にうれしい魔法が詰まっているような気がします。
それから、『通訳ダニエル・シュタイン』(リュドミラ・ウリツカヤ)、『古書の来歴』(ジェラルディン・ブルックス)、『つづきの図書館」(柏葉幸子)など、印象的な本でした。
また、いつかいつか、と思っていた『ゲド戦記』読破を果たせたことも晴れ晴れ嬉しいです。

3月の読書メーター
読んだ本の数:27冊
読んだページ数:7111ページ

かいじゅうくんかいじゅうくん
「おおかみと七ひきのこやぎ」のかいじゅう版かと思ったのよ。そしたらこのオチでしょ。・・・きゅん。
読了日:03月31日 著者:ウテ クラウゼ
古書の来歴古書の来歴
宗教を盾にして人々が人々にしてきた愚かで残虐な行為。宗教を越えた名もない人々が人々を救った偉大な行為。本が物語ることはどれもずっしりと重い。古書鑑定家ハンナの本への思いが好きでした。「書斎――私の大好きな部屋の一つ、なぜならそこにある本のすべてに物語があるように思えるから」
読了日:03月31日 著者:ジェラルディン ブルックス
つづきの図書館つづきの図書館
やっぱり本は友だちだなあ、としみじみと思える本でした。読み手がその本を忘れてしまっても本の中から黙って気に掛けてくれるつづきの物語がたくさんありそう。そして大切な本たちは、大切な読み手たちを、自分の手元に引き止めたりはしない、ちゃんと背中を押して広い世界に送り出してくれるのだ、と、そんなこともうれしくなります。
読了日:03月29日 著者:柏葉 幸子
アースシーの風 ― ゲド戦記Vアースシーの風 ― ゲド戦記V
今まで脈々と続いてきた世界をつき崩してしまった。広がりより深みの物語でした。すべてを壊してやり直すことが可能なのかどうかはわかりません。結論は出ない。この世界は続いていく。ひょっとこの続きがいつか書かれるかもしれない。今はただ、人生を思いっきり生ききった人々の充実と平和が美しいです。
読了日:03月27日 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン
カモ少年と謎のペンフレンド (白水uブックス―海外小説の誘惑)カモ少年と謎のペンフレンド (白水uブックス―海外小説の誘惑)
文通で英語が得意になったらうれしいけど、見えない相手と共感しあったり、相手の住んでいる町はどんなところかな、と考えたり、いつか会いたいなと夢見たり・・・のほうが楽しみだと思う。謎かけも謎解きもしゃれていてとっても楽しかったけど・・・御本人は気の毒でした。しかし、名前!気がつかなかった。悔しいなあ。
読了日:03月26日 著者:ダニエル ペナック
貝がらと海の音 (新潮文庫)貝がらと海の音 (新潮文庫)
うれしい、ありがとう、という言葉は、こんなにもよいものだったんだね、と改めて感じました。ほっとします。嫌なことばかり、不安なことばかり、数えたてても、辛さは消えないけれど、いつの日にも陽だまりのような小さなぬくもりがひとつ、ふたつあるなら、そちらに目を向ける余裕を持ちたい、そんなふうに思いました。
読了日:03月25日 著者:庄野 潤三
砂金 (愛蔵版詩集シリーズ)砂金 (愛蔵版詩集シリーズ)
時に残酷だったり絶望的だったりして不安になるのですが、なんとも言えない輝きにはっとします。暗闇の中に宝石のような赤青緑の光がきらめいているのが見えるような気がする。モローの絵みたいに。美しさに溺れそうで怖いくらい。
読了日:03月24日 著者:西條 八十
ゲド戦記外伝ゲド戦記外伝
ゲド以外(ゲドが出てくるのもあり)のアースシーの物語を五つ読み、この世界の厚みと幅が広がったような気がします。好きなのは『地の骨』。偉大なことを為した所よりも、ひとりで老いていくことを静かに受け入れる姿に、大きな知恵や豊かさがあるように思えて、わたしもいつかそんな老い方ができるのだろうか、と思いました。
読了日:03月24日 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン
FUTON (講談社文庫)FUTON (講談社文庫)
『蒲団』は、打ち直しをして新品同様が三つになった。実も蓋もない話も、ほどいてみれば、こんなにたくさんの物語がある。それらがみんな一緒になって、三つと思ったのがやっぱり一組の蒲団だったよ、と思ったのでした。さわやかな読後感です。好きな登場人物は、不機嫌なガラガラ声で「ハラペーニョはどういたしやす?」のタツゾウさんです。
読了日:03月21日 著者:中島 京子
帰還―ゲド戦記最後の書 (ゲド戦記 (最後の書))帰還―ゲド戦記最後の書 (ゲド戦記 (最後の書))
ファンタジーというよりリアリティ。より地に足の着いた物語になっていました。「なぜわたしたちはこんなことをするんだろう」とつぶやくゲドだけど、わたしたちはきっとだれもがそうつぶやきながら、自分のできることをこなしながら一歩一歩歩いていくしかないのだろう。ありのまま、そのままの自分であることが、大きな可能性であると信じて。
読了日:03月20日 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン
カバー、おかけしますか?―本屋さんのブックカバー集カバー、おかけしますか?―本屋さんのブックカバー集
書店のカバーの展覧会。どれもどれもさりげなくてセンスよくて、バッグから取り出す文庫本にこんなカバーがかかっていたらうれしくなっちゃう。日本全国この本片手に本屋さんめぐりしたいよ。「カバーかけてください」と言いながら。
読了日:03月18日 著者:出版ニュース社
オール・マイ・ラヴィングオール・マイ・ラヴィング
大人になるということは大切なひとりひとりと別れていくことでもありました。14歳の愚かさと悲しみが成長痛のようでもあり、やるせなくて切なくて、懐かしいのです。その無力感と不安感を埋めるようにビートルズが流れ続ける。別れ歌「オール・マイ・ラヴィング」
読了日:03月18日 著者:岩瀬 成子
通訳ダニエル・シュタイン(下) (新潮クレスト・ブックス)通訳ダニエル・シュタイン(下) (新潮クレスト・ブックス)
相手の名前さえ知らずに、繋がっている自覚さえもなく、それでも繋がっていく。民族や宗教を越えて、主義主張、歴史も超えて。ひとりの「通訳」による「愛」と「理解」という言葉で。もしかしたら大仰な言葉ばかりが残って空回りしそうなテーマを、誠実に描ききってくれたことの偉大さ。この本に出会えてよかった。
読了日:03月17日 著者:リュドミラ・ウリツカヤ
通訳ダニエル・シュタイン(上) (新潮クレスト・ブックス)通訳ダニエル・シュタイン(上) (新潮クレスト・ブックス)
まわりの人々の手記や手紙から、一人の人の姿がたち上がってくる。一人の人の姿からまわりの人々が浮かび上がる。うっかり読み落としているところがありはしないか、気がつかずに読み流したところがありはしないか、気になっています。恐るべき多重構造の物語です。図書館で借りた本。でも、きっとこの本は買うことになるだろうなあ、と思いながら、下巻に向かいます。
読了日:03月15日 著者:リュドミラ・ウリツカヤ
さいはての島へ―ゲド戦記 3さいはての島へ―ゲド戦記 3
(再読) 一巻で、やっと卵の殻を割って世に出てきたゲドは成長し、いまや人格者となり、神々しいほど。一読者としては寂しくて仕方が無いのでした。永遠に生きることを望み、生きることも死ぬこともできずにいる人々、少年の行きつ戻りつしながらの成長、黄泉でゲドの語った「死」の意味・・・。余韻をひいたラストシーンは、平和でありながら(平和だからよけいに)寂しくて後ろ髪引かれる思いなのですが、長い年月を経て、この先の物語がこれから始まるのですね。
読了日:03月14日 著者:アーシュラ・K. ル・グウィン
だって春だもんだって春だもん
春が少しずつ近づいてくるのを感じたら、少し息を詰めて、耳をすまして、静かにしていよう。春が近づいてくるのを見逃さないように、聞き逃さないように。喜びがだんだん満ちてきて、いっぱいになる。
読了日:03月14日 著者:小寺 卓矢
引き出しの中の家 (ノベルズ・エクスプレス)引き出しの中の家 (ノベルズ・エクスプレス)
この本を読みながらしみじみと幸せだった。心の中のからっぽだった「部屋」が温められ、明かりがともされていくようで。匂い、明るさ。どちらも形がないし、手でさわることもできません。だけどちゃんとある。そして、それは人をこんなにも豊かにしてくれる。力になってくれる。
読了日:03月11日 著者:朽木 祥
贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)
タイトルの「贖罪」・・・この言葉の意味するものの大きさ、思いがけなさ。そこに大きな光がある。苦しみに満ちた「贖罪」の物語なのに、この清清しく明るい輝き、しみじみとした余韻に打たれる。小説ってすごい。小説家ってすごい・・・
読了日:03月10日 著者:イアン マキューアン
贖罪〈上〉 (新潮文庫)贖罪〈上〉 (新潮文庫)
様々な場面を、複数の人物の目線から、繰り返し描き出していく。しつこいくらいに。同じ事柄を描いているはずなのに、相手に対する気持ちや、経歴、身分、物に対する愛着などなどが絡んでくると、同じ物事が全く違うものに見えてしまうのだ、と気がつき始めました。
読了日:03月08日 著者:イアン マキューアン
こわれた腕環―ゲド戦記 2こわれた腕環―ゲド戦記 2
(再読) 少女にその選択を促したのが幼い日の肌にしみこんだ記憶(匂い、皮膚感覚など)だとしたら、幼い子どもを育てるために一番大切なことが浮き彫りになっていくような気がします。・・・たぶん、それしか親にはできない、そして、それだけでいいのだな・・・そんなことを思いながら読んでいました。
読了日:03月07日 著者:アーシュラ・K. ル・グウィン
空の飛びかた空の飛びかた
二人の背中に漂う哀愁のようなものがしみじみと切ない・・・いや、ここで切ながっていてはいかん!と思わせてくれたラストが好き。
読了日:03月06日 著者:ゼバスティアン メッシェンモーザー
リスとお月さまリスとお月さま
切羽詰っているリスと、ろうやに入ったらどうなるかという所のほのぼの風景。動物たちそれぞれの大変さ。このギャップの大きさと、はずした感じのなごやかムードが、そこはかとなくおかしくて楽しい。オチもすてきでほのぼの幸せな気持ちになりました。
読了日:03月06日 著者:ゼバスティアン メッシェンモーザー
影との戦い―ゲド戦記 1影との戦い―ゲド戦記 1
(再読) 巻頭に置かれた『エアの書』の言葉、そして、最後にまたこの言葉に戻って来ました。西遊記の、どこまで行ってもお釈迦様の手の上だった、という話を思い出しています。世界のはてまで旅するゲドですが、この言葉から外れることは無かったんだなあ、としみじみ。オシオンの「向き直るのじゃ」という言葉が印象に残っています。
読了日:03月05日 著者:アーシュラ・K. ル・グウィン
かいじゅうたちのいるところ(小説版)かいじゅうたちのいるところ(小説版)
映画に書かれなかったあれこれの物語もあったけれど、逆に映画だからこそできた表現も確認することができました。両方に出会えてよかったです。かいじゅうたちはやさしいけれど、怖ろしい。それでも「アウゥゥゥ・・・」になる。かいじゅうたちが歌う美しい歌に新しい歌が生まれたような気がします。世界中でたくさんのマックスたちが、どこかでかいじゅうおどりをしている、そして、たくさんの湯気のたつスープが彼らを待っている。それぞれみんな違う姿、違う味で・・・それもとっても素敵なことだと思います。
読了日:03月04日 著者:デイヴ・エガーズ
ゼブラゼブラ
きわどいところでバランスをとっている子どもたち。そのぎりぎり感があまりに丁寧でリアルで、どきどきしました。明るくもないし、(たぶん)成長ともいえないけれど、子どものなかにあるパワーに打たれたり、どきっとしたりしました。心に残るのは、「ムーン」の最後のドラム。この本の6人の子どもたちに聞かせるためのドラムかと思うほど、圧倒的な迫力でした。
読了日:03月03日 著者:ハイム ポトク
こころ (新潮文庫)こころ (新潮文庫)
フィリップ・グランベール「ある秘密」を思い出して、この本の「秘密」と比べていました。遠い過去の物語も、今の物語も、それぞれに、少し似ていて、大きく違っているところを、日本と西洋の「こころ」の違いのようにも感じています。それにしても、「純白に保存して置いて遣りたい」って、女を何だと思っているんでしょう。先生の死に様と比べれば、主人公のおとうさんの最期の日々にほっとします。
読了日:03月02日 著者:夏目 漱石
パリの廃墟パリの廃墟
著者は、パリ市内や郊外の崩れかかった廃墟を散文という形でスケッチする。搾取する人々、瓦礫に息づく植物、その上に広がる空・・・。華やかな市街よりももしかしたら、ずっと素直で美しいパリ。そして、訳。著者と訳者は同一人物(のわけないのはわかっていますけど)と言われても驚かないくらいぴったり。訳者あとがきもいいです。
読了日:03月01日 著者:ジャック レダ

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