紅はこべ

紅はこべ (創元推理文庫 507-1)紅はこべ
バロネス・オルツ
西村孝次 訳
創元推理文庫
★★★


>あちらだ、こちらだ、おいらは捜す、
フランス人めも、くまなく捜す。
み空にいるのか――地獄にか?
姿消したる、紅はこべ。
革命直後のフランスで、ギロチンにおくられる直前の貴族たちを人知れず救出し、
無事にイギリスに逃がしていた神出鬼没の一団。
彼らは「紅はこべ」と呼ばれました。
フランス全土で憎まれ、イギリス全土で歓呼される紅はこべ。しかし、その首領の正体たるや全くの謎。


長きに渡って読みつがれてきた本なのに、作者については、ほとんど何もわからない、と知れば、
それほどに面白い本なのか、と興味が湧いてきます。
はい、おもしろかったです♪
痛快な冒険あり、ロマンスあり、主人公も女主人公も、とびきりの美男美女、
しかも賢く勇敢、地位も名誉も財産も、ないものなんて何もないのですから、もうできすぎです。
敵は、といえば、極上品(笑)の筋金入りの悪党。
でも、かならず主人公のほうが一歩リードすることになっている。これはお約束。
狡猾な敵の罠をかいくぐり、変装、奇策を自由自在に使いこなし奔放に現れては消え去る。
命がけの救出劇も彼らにとっては退屈しのぎのほんのスポーツみたいなもの、だなんて。あいた口がふさがらん。


目の前のサービス満点の大ご馳走。おなかいっぱいいただいて、満腹、幸せだあ、と、ごろーんとひっくり返っていいんだね。

>・・・しかも、むろん、すべては単なる遊びと冒険のためなのだ――ほかの人たちなら猟でもして興奮を求めようとするところを、大儀のため、男を、女を、子どもたちをつぎからつぎへと死から助け出すのである。あのなまくらな大富豪はなにか人生に目的がほしかったのだ――彼と、彼の旗のもとに集まった数人の若い伊達者たちは、罪のない人間のために、ここ数か月も身命を賭して楽しんできたのだ。