Now and Zen

Now and Zen (Sass Students Across the Seven Seas)  / Linda Gerber


英語圏のティーンエイジャーたちが夏休みに非英語圏の国に短期留学し、その国の風土、文化、習慣を学びつつ、友情や恋愛なども体験しつつ成長していく、というYA向きの軽めのシリーズ、Sass Students Across the Seven Seasのうちの一冊。
この本を手に取った理由は、舞台が日本だったから。アメリカの短期留学生(あるいはアメリカの作者)から見た日本ってどんな感じなのかな、と興味を持ちました。
主人公はJapanese Americanの16歳の少女Nori Tanaka 。
顔や姿は日本人といっしょだけれど、彼女は日本語は一語も話せないし、箸の使い方も知らないし、日本の習慣について両親や親戚から教えられたことは一度もなかった、生粋のOhaioっ子。

この本、日本のことをよく知っているなあ、実際足を運んでじっくりと取材されたんだろうなあ、と感心しました。
東京(渋谷、新宿、六本木、築地、両国・・・)、日光周辺、冨士山(五合目まで上って日の出を迎える)、京都・・・
カラオケバーや回転寿司、駅で見かける女子高生のルーズソックス(夏なのに)
この本は小説であると同時に、コンパクトな日本の観光案内にもなっているような感じ。
そして、あちこちを訪れるたびに触れる日本人の習慣や文化、考え方・・・タイトルの"Zen"は、「禅」です。読んでいて「へえー、そうなの?」と知らなかったことが恥ずかしくなるくらい。(15個目の石の話とか)

だけど、その一方でどこかおかしい。
とても丁寧に日本のことを調べてあり、非の打ち所がないような案内書でありながら、登場する日本人がなんとなく不自然。
日本人、あんなにしょっちゅうお辞儀するかな。(意識してないけどしてる?) 特に先生にものを言うときにお辞儀をしてから丁寧に話すティーンエイジャーは、今では多分・・・希少価値かと・・・。
京都のjijiの庭も、あまりに完璧な日本庭園で・・・ちょっと奇妙。いや、そういうお庭がないとは言わないけど・・・あのお庭と、どこに行くにも自転車(雨が降ったら傘さし運転・・・これは捕まるよ?)の老夫婦、なんとなく不思議。いないとは言わないけどさ。
・・・やはり、外から見た日本、なんですよねえ。

物語はそこそこおもしろかったです。
最初のほうで、電車を乗り過ごし、降りる駅がわからなくなってしまったNori、顔が日本人なので、彼女が何に対してどのように困っているのか周囲に理解してもらうことができないでいる怖さは、なんとなく身にしみました。

親の不仲・親の過干渉から逃げるようにして参加したこのプログラムの中、さまざまな失敗をしたり、悩んだり、人を傷つけたり、傷つけられたり・・・それがいろいろなもの(特にzen)を見聞きする中で考えを深め、成長していくNori、ありがち、といえばありがちなお話ですが、ラストシーンはそれなりに爽やか。