とんがりみさきから、釣り船に乗って、つりにでかけただるまさんが沖に出たところで、とつぜん雨がふってくる。なぜかエンジンもかからない。
おくさんの水玉模様のレインコートを着ただるまさん、近くの島にむかってこいでいく。
「ゆーびんやさーん」と島から呼ぶ声がしたから。実は、だるまさんの本業は郵便やさんです。
がんこもののおじさんがある事件をきっかけに忘れていた子どものころの大事なことを思い出し、みずみずしい心を取り戻す、というお話。
心がほんわかするちょっといい話ですが、よくある話でもあります。
しかし、「ある事件」やら、小道具やらは、高楼方子さんらしいです。ぎょっとする演出。あらけずり、子どもっぽい(良くも悪くも)感じなのに、そのユーモアは、なんだか、素直でゆったりとしています。のほほーんとしています。好きだなあ、この雰囲気。
(おくさんの)水玉模様のレインコートを着たおなかの出たおじさんが、水玉模様のドロップりゅうといっしょに、コートのすそをひるがえしてなわとびをするところ、お茶目でかわいいです。(佐々木マキさんの挿絵がぴったり)
島に実る不思議なドロップの実がおいしそう。
>ガラスのようにかたかったはずの実が、ぷるんっとゆれて、それはそれはおいしそうなゼリーにかわったのです。・・・・・・・
トロンとあまく、スーッとつめたく、シュワッとさわやかなあじでした。
主人公のだるまさん。頑固者ですが、「女物のレインコートを着るくらいなら濡れた方がましだよ」というタイプの人じゃないのがいい。この人にとってはレインコートは雨をよければいいんだよね。見てくれなんかまったく気にしない。
傍から見るとなんとなくおかしくて、かわいいのですよね。この人はきっと、笑われても自分がどうして笑われているか、気がつかない。そういうがんこさ。…もしかして、頑固者って童心に一番近いところにいるのでしょうか。(一見一番遠そうなのに)
そういえば。…わたしも「がんこもの」とよく言われます。…近しい家族に。