にぐるまひいて

にぐるまひいて

にぐるまひいて


秋です。
家族四人が一年かけて作り上げた農作物や手工芸品を荷車いっぱいに詰めて、おとうさんは10日かけて市場へ出かけます。
市場では、品物も、荷車も、それを引いてきた牛(元気でね、と鼻にキスして)や、手綱まで売ってしまいます。全部売れたら、家族の一年間の必需品とお土産を買い、何日も歩いて家に帰ります。
家族はおとうさんの帰りを待ち、静かに新しい一年を始めます。

感情を表す言葉も、絵も、ひとつもありません。
アメリカのフォークアートを思わせる、すっきりした美しい絵です。そして、歌うような短い文が添えられているだけです。
それなのに、
文にも絵にも描かれていない部分に心を動かされて本を閉じる・・・そういう本です。

何度この本をひらいたことでしょう。
何度この本から勇気をもらったことでしょう。
何度も何度も開き、声を出して読んだこの本は、生活のいろいろな思いを吸い取り、静かな力を満たしてくれるのです。
生きるということ、あたりまえに生活するということが、とても尊く思えてくる本。
一日一日を大切に生きよう、一歩一歩歩いていこう、今いるこの場所から。そういう力と勇気を与えてくれます。