シリーズ3作目。
人知れず秘密の塔に閉じ込められている男を救出しようと言うミス・ビアンカの呼びかけには、囚人友の会は満場一致で否決。
シャーン君率いるネズミのボーイスカウト(!)の助けを借りて、友の会に内緒で作戦を計画するミス・ビアンカ。
この囚人は何者なのか、また本当に助ける値打ちのある人間なのか・・・
実際、ミス・ビアンカが本当に動き出すのは、最後の三分の一あたりです。
念入りな調査、周到な準備、そして「本当に囚人はミス・ビアンカが思っているような人なのか」ということは、最後まで気がかりでした。
途中で、「この話、わかったぞ。この男、改心したと見せかけて、自由になるやいなや本性を顕すのね。そして、彼の悪事と戦うのが次の巻の冒険に違いない」と思いかけていました。
忘れていた、ミス・ビアンカの冒険は、戦わない。決して。励まし、頭を使って救い出し、ともに逃げる、安全な場所まで。――それが好き。
やりとげるのは、小さな小さなねずみ、そして、迫害され、身を守る道具を何一つ持たない弱い人間。――それが好き。
最初のほうで、囚人友の会に辞表を書くミス・ビアンカの筆記具が素敵です。特に羽ペン。彼女のはねペンはかるいミソサザイの羽でした。
それから、競馬馬のサー・へクターが魅力的。
「どんな騎手も、サー・ヘクターの手綱を引き締めることはできませんでした。かつて、それをやろうとした身のほど知らずの騎手を、サー・ヘクターは、最初のコーナーのへいのあたりで、ふりおとしてしまいました。――けれども、気高い性格のサー・へクターは、ほかの競走馬が地面をゆるがしてとおりすぎるまで、おちた騎手のからだをかばうようにその上に立っていました。」
蔦を登っている途中、コウモリに出会ったボーイスカウトがおもしろかった。
「自分の種族と似ているのに、つばさがついていたのです。・・・スカウトたちは、全員、幽霊を見たのだと思いました。(かわいそうなマギー叔母さんが、天使になったのだ)」
友の会の事務局長としての職務に忠実であろうとし、一方、ミス・ビアンカを心配して心を砕いているバーナードの不器用な誠実さが、今回も好もしかったです。(笑っちゃ悪いよね)
そして、一生独身を決心している(らしい)二人のなんとなく“いい感じ”が微笑ましいです。
最後に作者から日本の読者への挨拶が載っていたのがうれしかったです。そこにこんな一文が・・・
「ミス・ビアンカもよろこんでやさしくひげをみなさまにむけてさしのべ、バーナードは、二歩うしろにさがり、一歩まえにすすみでて、頭をさげております。」
この二人の姿が見えるようです。わたしも思わずお辞儀したくなるのでした。