『破軍の星 』北方謙三

建武の新政で、後醍醐天皇より16歳の若さで陸奥守に任ぜられた北畠顕家。奥州を平定し、住民を掌握し、見事な成果をあげた。
足利尊氏の反逆に対し、朝廷の臣として、時代を駆け抜けて行った英雄。

北畠顕家
動かしようのない歴史の中で、実在した一人の人間。
彼の成した業績、そして、死。すべての運命は読む前に読者は知っている。(先に後書き読んだからわたしも知ってる♪)

その人物を物語の上に載せるとき、作者は、この人物にどのような魂を与えるのか、どのような人生観を与えるのか・・・
その行為にどのような意味を見出そうとするのか・・・

天皇を頂いてひとつに纏まる日本という国。
顕家の理想。腐り切った朝廷の臣として、民を思い苦しむ。

安家一族という山の民が出てくる。
安家一族の抱える夢。
理想の国、顕家を主として。

読みながら何度思っただろう。
安家一族の夢に答えることができたなら。
最初の上洛で、足利尊氏の首をとっていたなら。
しかし。

はじめからわかっていた。
歴史なのだ。起ってしまったことなのだ、
決して換えることはできないのだ。
物語はただ起こってしまった方向に進んでいくしかないのだ。

駆けていく。
待ち受けるのは死。
なのに、こんなに清清しい。そう。彼らが駆っていく先にあるのは死ではない。大きな夢、命にむかって、光に向かって。
駆けていく、夢を追いかけていく人々。