古い領主館にひきとられた孤児マリアは、館にまつわる伝説に興味を抱き、その謎を解こうとする。
活発で明るいマリアは、周囲の大人たちを巻き込みながら、暗い館の生活、領地の人々の生活を変えていく。
「スリルあふれるロマンチックな物語」とカバーの裏に書いてある。
妖精じみた男の子、仙女のような女性、小人のような不思議な使用人、人間よりかしこい精霊の知恵を持った不思議な美しい動物たち。
声を合わせて歌う村のかわいい子どもたち。
手をのばして食べてみたくなるおいしそうな食卓、すばらしいピクニックのお弁当。
かわいらしくロマンチックにしつらえられた女の子の部屋。
美しい田園風景。花にかざられた家々。
ロマンチックがこんなにいっぱい! おなかいっぱいすぎて、動けなくなりそうだ。
お話はおもしろい。次々解き明かされる、魔法のような秘密。
最後まで楽しく読めた。
しかし。
出てくる人たちがみんな良い人すぎて、…小さい声で言うけど、う、薄っぺらくないかい?こんなんでいいのかな。
これは御伽噺だよーと大きな声で宣言してから読みたい本、という感じでしょうか。
「あたし、二と二を足しただけだわ」
「あまり足し算がじょうずすぎて、こわいみたいよ」
これは、主人公マリアとラブテ゛ィという女性の会話。
でも、わたしも、後半、こんな気持ちになってしまいました。
まるで、ジグゾーパズルを嵌めていくように、ぴたっとなにもかもが狂いなくはめこまれて、ハッピーエンドが近付いてきた時、うまく行き過ぎて、不自然だと感じてしまった。
これは御伽噺だぞー。
すごくロマンチックなお話です。
そして、(たくさん批判してしまったけど)不思議な魅力があります。
この不自然なまでのロマンチックさがなければ決して成立しない世界だと思いました。
絶版のときが長くて、多くの人たちが、子どもの頃読んだこの話を忘れられず、どうしても手に入れたい、と望んでいたそうです。あの柏葉葉子さんもそのひとりだった、と聞いたことがあります。