2月の読書

2017年2月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:1727ページ

ハルとカナハルとカナ感想
なにかを不思議と思ったり、それをもっと知りたくなったりすることは、好きになることのはじめの一歩かもしれない。不思議を不思議と素直に思えるとき。それをゆっくりと考えられる時間。大きくなって忘れちゃってもいいんだ。そうした時間をすごすことができたらいいなあ、と思う。作者の筆は、子どもたちの時間を大切に守っている。
読了日:2月28日 著者:ひこ・田中,ヨシタケシンスケ
ポーランドのボクサー (エクス・リブリス)ポーランドのボクサー (エクス・リブリス)感想
ユダヤ人、ジプシーという言葉は、民族として、インパクトがありすぎて、そのなかで、「個人」であろうとすることは、難しいのかもしれない。迫害を生き延びた民族の歴史を持つ人が捜し求める「個」の重さに、身がすくむ。この本、訳者解説まで含めて一つの作品だ。これは読むたびに違う作品になるのかもしれない本、と思う。
読了日:2月26日 著者:エドゥアルド・ハルフォン
しあわせな いぬに なるには: にんげんには ないしょだよ! (児童書)しあわせな いぬに なるには: にんげんには ないしょだよ! (児童書)感想
犬のために犬が書く「人との暮らし方」の指南書。犬を家に迎えるにあたって、私はこの子を選んだつもりだったが、犬もまた、一緒にくらす「にんげんえらび」をしていたのだ、とどうして思いつかなかっただろう。一緒に暮らせば、うれしいことも困ったこともある。「それでも、かいぬしと いっしょならまいにちが とっても たのしいはず」に、お互いにね、と思う。
読了日:2月24日 著者:ジョーウィリアムソン
世界を7で数えたら (SUPER!YA)世界を7で数えたら (SUPER!YA)感想
人が出会い、人が集まる。チームになる。否応なしに存在する思いこみ。でも、近づけば近づくほどに、互いに様々な面があることに気がつくし、それは、時とともに、どんどん変容していく。その面白さに、わくわくしてしまう。思い浮かぶのは小さなドングリ。「ドングリはつまるところ種だ。種は定義すれば、なにかの始まりということになる」
読了日:2月21日 著者:ホリー・ゴールドバーグスローン
海辺の家海辺の家感想
『独り居の日記』での豊かな孤独の日々の、これは後の記録。幸福と引き換えに、書けなくない、と悩むなんて。彼女の美しい日々・彼女の幸福が、むしろ息苦しくすら感じてしまった。この満ち満ちた日々を喜びつつ、同時に、彼女の芸術家としての魂が苦しんでいるのを感じる皮肉。けれどもそれも地上の一時の揺らぎにすぎないのかも。地の下には動じないものを感じてもいる。
読了日:2月13日 著者:メイサートン
わかっていただけますかねえ (エクス・リブリス)わかっていただけますかねえ (エクス・リブリス)感想
物語が11ある、というよりも、一人の人間を、あらゆる方角から眺めているような気がする。11のバリエーションで波のように繰り返される「彼」の自分語り、あるいは内省の物語、という感じだ。浮かび上がるのは家族。そして、海。宇宙も海。砂漠にも、言葉にも、海が隠されているよう。『最初のオーストラリア中南部探検隊』の、砂漠のなかの「海」は本当に透明で美しかった。
読了日:2月5日 著者:ジム・シェパード
海に向かう足あと海に向かう足あと感想
読了後、苦さと愛おしさを胸に表紙を見ている。ディストピアは未来ではない。架空の都市でもない。ディストピアは、ここだ! ――そのことが心底おそろしかった。最後に現れるシンボルスカの詩句。この言葉は、すでに手遅れかもしれない世界から、もしかしたら「まだ」間に合うかもしれない読者に手渡されようとしている。祈りをこめて。受け止められるのだろうか、私たち。
読了日:2月1日 著者:朽木祥,牧野千穂

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