『スズメのくらし』 平野伸明


表紙の写真に、そおっと手を差し伸べたくなる。
どこにでもいる、ちっとも珍しくないスズメだけれど、その姿やしぐさの愛らしさには、美しさを誇る籠の鳥たちでさえ適わないのでは? 
そんなことを思いながら、ゆっくりと扉を開く。


だけど、本書の中の言葉どおり、「そのくらしは、わからないことだらけ」なのだ。
どこで寝る?
どんな巣?
どんなたまご?
・・・言われてみれば、何も知らない。ただよくみる、(きっと)どこにでもいる、ということに甘んじて、知らないことさえも気が付かなかったんだ。


繊細で臆病なスズメのくらしを追いかけて、スズメのくらしに深く入り込んだ、ほら、こんなにたくさんの写真。
その労力と時間を思います。
1ページ1ページが初めて知ることばかり。
砂浴びの意味も初めて知った。
天敵のノスリの巣の下のスズメの巣におどろく。(ノスリのおおらかさにもおどろく)
地味だけれど情熱的な求愛ダンスに思わず頬がゆるむ。注意深く見守っていれば、わたしでも気づくことができるのだろうか。


スズメについて、なんてまあ、知らなかったことだろう。なんてまあ無関心だったことだろう。
すぐ手に届くところにあるのに、見ようとしなければ何も見えない、知ろうとしなければ何も知らない。しみじみと感じています。