みんなの家出

みんなの家出 (福音館創作童話シリーズ)

みんなの家出 (福音館創作童話シリーズ)


タイトルの「家出」という言葉に不安になる余裕を蹴散らすかのような表紙の力強さ。
ふんだんな挿絵が不思議だ。人物が全部鶴と亀なのだ。ランドセルを背負った鶴。書きものをする亀。
すごく奇妙なインパクトのある本ではないの。
みんなの家出って何なのだろう。
 子どもには家出をする権利がある。
 子どもはだれで家出を夢見る。
 子どもにはだれでも家出を実行する力がある。
ひゃ、ちょっと、待って。そんな過激なことを言わないでほしい。


最初の印象があまりに過激に思えたせいだろうか。
読んでみて、ほっとしたというか・・・
そうか、家出って・・・だんだんわかってきた。
わたしたちのこの体が家なのかもしれない。
古い家を脱ぎ棄てて新しい家を探すもよし、戻るもよし。
どちらにしても、古い家はもう今までのままの古い家ではないだろうし、新しい家も、少し古いのが混ぜ込まれているんじゃないかな。


家出の夢か。
子どもが小さかったころ、熱中してしきりに作っていたヒミツキチ。
あれも一種の家出だったかな。
小さいながらに、一人きりの時間を求めていたのか。それとも親の手を離れて、どこか遠いところに飛び発っていくための無意識の練習だったのか。
子どもの「家出」は親にとっては、めでたくもあり、やっぱりさびしい。
さびしがっていないで、わたしもささやかな家出を準備しよう。
いつかひとりで出かけたい場所を地図でたどったり、小さな秘密の花園を作ったり、・・・ほんとにささやか。