6日目の未来

6日目の未来 (新潮文庫)

6日目の未来 (新潮文庫)

  • 作者: ジェイアッシャー,キャロリンマックラー,Jay Asher,Carolyn Mackler,野口やよい
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/12/01
  • メディア: 文庫
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1996年。うちには、まだパソコンはなかったな。
このもっとあとだった。友人に
「テレビや洗濯機のように、パソコンがどこのうちにもある時代がくるんだよ。あと十年、いや、そんなにかからない。五年かな」
と言われたとき、びっくりして、返事もできなかったな。
考えられなかったもの。我が家にコンピューターがある、という図が。まして、テレビや洗濯機のようになんて。


わずか17年前のことなのに(そして、はるか彼方の自分の学生時代のことを「きのうのよう」と思っているわたしなのに)ついこのあいだの1996年はこんなに遠い。


エマがパパからもらったパソコンを初めてインターネットにつないだ日、なぜか15年後のフェイスブックにつながってしまった。
15年後の自分はあまり幸せではなさそうだった。
しかも、エマが何か行動する度に、フェイスブックを覗く度に、未来の姿は変わっていく。
ただ、どのように変わっても、変わらないのは「幸せではない」ということだけだった。
どうしたら、幸せになれるのだろう。エマは躍起になる。


瞬間瞬間、億万の選択肢の中から、わたしたちは無意識に次の動作を選択している。そして、その無意識の動作の影響は遠い未来へと波紋のように広がっていく。
なんと遠大なんだろう。
たとえば、今、このキイボードの上に乗せたわたしの指が、次に打つはずの一文字を打ち間違えたり、ためらって止まったり…そんな微妙で些細なことさえも、未来に影響を及ぼしているってことか。
そして。過去も、細い細い無意識の選択の糸で繋がれて、ここまで伸びてきているのだなあ。ほんとうに無限大分の一の確率でわたしはここにいる。
なんだかくらくらしてしまう。
だったら、未来を知ることなんておよそ不可能だ。無限大の未来の可能性のうちの一場面を見たところで、その通りの未来になる可能性なんて無いに等しいわけだものね。


わずか6日間。
フェイスブックに翻弄されて、エマ(とその親友ジョシュ)の心はまったく平和ではなかった。
未来の自分が「幸せになれない」のは、どうしてなんだろう。
もっといえば「幸せ」って何なのだろう。
エマ(とジョシュ)は、ひどい6日間のあとに、気がつく。・・・ふっと微笑んでしまった。
きっとエマだけじゃない。
未来のフェイスブックを覗いたことがあってもなくても、いろいろな形で、こんなふうに自分と向かいあえるっていい。
時には、よい歳の大人になってもまだ気付けないこともある。気がついたとしても克服できなかったりもするんだもの。
15年後、20年後・・・無限大の未来のどこに自分は着地しているのだろう。