わからん薬学事始①


ものの数ページ読んだところで、不安になった。
私、この本読み切れるんだろうか?
なぜってね、設定があまりに現実離れしているのだもの。


主人公の生まれ育ったのが、久寿理島という、地図にも載っていない小さな島。
周囲の潮流が複雑であるため、本土との行き来はほとんどない。
島の生活は自給自足。たいていの人が島から一歩も出ることなく一生を終える。
島の唯一の産業が、秘薬「気休め丸」の久寿理島製薬である。
島の人々から「ぼっちゃん」と呼ばれる草多は、久寿理島製薬の七代目を継ぐことになっている、四百年目にやっと生まれた一族期待の男子である。
そして、掟により、秘薬を改良することが許されるのは男子だけなのだという。
よって、草多は、薬学修行のために15で島を出る。私立和漢学園入学のため。
そして、この和漢学園がまた不思議な高校。
下宿することになる「わからん荘」がまた変なアパート。さらに出会う人々があまりに個性的すぎるへんな人々。
・・・と、ここに書いたのは、ほんの一部にしかすぎない。不思議なことはまだまだ、まだまだ、いーーっぱいある。
ほとんどファンタジーではないか、いや、ほんとはファンタジーなの?


しかし、ついていけないかも・・・と思ったのは、ごく最初のうちだけ。
ぶっとんでいるならそれもいい。いまどきなぜ男子オンリー? いや、その件については、これからの巻を待つ。
そっくりそのまま受け入れて、あっというまにのめりこんだ。そしてあっというまに読み切った。
あまりに個性的すぎる登場人物たちは、現実離れしたこの世界にぴったり嵌る。
②はいつ読めるの? 図書館にはまだ入っていないって? 続きを早く! という気持ちになっている。


草多の浦島太郎ぶりのおもしろさ。おぼっちゃん故の人の良さ。
都会・学校の生活ついていけるのか、という懸念と、先祖ゆずり(?)の天分。
主人公を囲む、謎の人々、ライバル、個性的な友人たち、先輩たち。
彼らが魅力的なのは、どうも本当の性格は見てくれとは違うんじゃないかな、と思うような一面をちらちらのぞかせてくれるから。
そして、いっぱいの謎。もしかしたら、あれはこういうことじゃないのかな、それとこれが関係しているんじゃないのかな、と想像しつつ、この先の展開を楽しみに待つ。
主人公はこの環境にもまれながら、何を身につけることができるのか。
物語は始まったばかり。
気になる気になる。今、主人公草多の前に、わずか扉が開きかけたところです。