あのね (子どものつぶやき)

あのね 子どものつぶやき (朝日文庫)あのね 子どものつぶやき
朝日文庫
★★★★


小さい子どもからこぼれる言葉は、時々、そばにいるおとなを一瞬絶句させてしまう。
それは輝くようなピュアな感性への感動だったり、この覚えたての言葉をそういう絶妙な場面で使うのか、という驚きであったり・・・
あまりに素敵なので、その言葉の切れ切れをメモしてノートに書き溜めておいたこと、わたしもあったなあ。
これが学校にあがり、ひらがなや漢字を使い、たしざんやひきざんなどができるようになると、
不思議や不思議、新しい知識と引き換えに、あのかけがえのない言葉たちが徐々に消えていってしまうみたいなのです。
子どもの成長はうれしくもあり、さびしくもあり、です。


この本は、朝日新聞の「あのね」欄に投稿された投書を集めたもの。
どれも子どもの近くにいる大人が、拾い集めた子どもたちの小さなつぶやき(でも聞かせてもらうのは大きな喜び)です。
読みながら笑い転げたり、しみじみと感心したりしながら、このページの向こうにいる幼い子どもの姿を想像したりしました。
そして、わが子の小さいときを思い出し、懐かしく、ほっかり温かい気持ちにさせてもらいました。
この小さな文庫本には、子どものいい匂いがたっぷり詰まっていました。


☆お気に入り覚書☆
(引用)


>母がミシンをかけている様子をじっと見ていた。
いきなり大声で、「それ すごいはしゃいでるねー」 (4歳)


>体重計にのってママのまね。
「やばーい」 (2歳)


>お人形をかわいいゴムで結っていた。
母「大きくなったら美容師さんになるの?」
「ううん 忍者」 (5歳)


>初めての海、波を怖がり、
「海が 動いてないときに また来る」


>父がハエを片手でつかまえた
姉「早く虫かご持ってきて」 (6歳)
弟「虫眼鏡と図鑑も」


>幼稚園に行く途中、青空にうっすら浮かぶ白い三日月を見つけた。
「あっ ゆうべの 残りもん!」


>踏み切りでのぼり列車がとおったあと、すぐに下り列車。
「わすれもの したんじゃろう」 (2歳)


>団地で「あー」と大声。
「声が空から降ってくるよ」
やまびこだった。 (3歳)