『ハロウィーンがやってきた』  レイ・ブラッドベリ 

ハロウィーンの夜。
魔女に骸骨、死神、ミイラ、ガーゴイル(一種の魔物?)・・・
それぞれに仮装して幽霊屋敷に集まった8人の少年が、屋敷の当主、不思議なマウンドシュラウド氏の導きで時をさかのぼる、古代エジプトへ、イギリスへ、フランス・パリへ、メキシコへ・・・
死神に連れ去られた彼らの親友ジョー・ピプキンを救うため。
ピプキンってどんな子? たとえば・・・

  >ピプキン。あらゆるスピードとにおいと手ざわりの集大成。
   走り、ころび、おきあがり、
   ふたたび走ったすべての少年たちのエッセンス。

わくわくするじゃないですか。男の子に対する最高の賛辞のような気がする。
そして、8人の男の子たちの冒険。うらやましいなあ。こういう冒険って、なんで男の子に似合うんでしょうね。女のわたしは羨ましいやらなにやら・・・

そして彼らは行く先々で、さまざまな生と死を見て、ハロウィーンの本当の意味を知るのです。わたしも。

    >おお、ご先祖さま、お帰りください、どうぞこの家に。
   闇の国におられようと、わたくしどもにはなつかしいお方です。
   道にはぐれぬよう、まよわぬよう。
   なつかしいかたがた、お帰りください、お帰りください。

古代エジプトハロウィーンに、わたしは、日本のお盆を思い浮かべていました。
ちょうちんにろうそくを灯して、我が家に、ご先祖様をお迎えする。
小さなままごとみたいなお膳とお茶碗に、毎日ごはんをそなえる。おがらの箸を添えて。
ご先祖様が帰られるときには、きゅうりと茄子におがらで4本の足をつけた馬を門口にならべる。ご先祖様が乗っていかれる馬。冷麦の縄を添えて、おみやげを馬に結わえて。
国境を越えて、時代を超えて、形は違っても、死者を敬う心は一緒と感じました。亡くなった人の霊をなぐさめ、子供達の健やかな成長をどうぞお守りください、と。

パリのくだりでは、ヨーロッパの伝説に疎い自分が悔やまれました。魔物のことや、その不思議な習わしなど、知っていたらもっと楽しめたかな、と。
メキシコの墓地のくだりでは、「10月はたそがれの国」に収録されていた「つぎの番」を思い出しました。あ、あのキャンディかしら、あのお墓かしら、あのミイラだね。

それにしても、なんと美しくて、幻想的な語り口だろう。リズミカルで詩を読んでいるようでした。
そして、ハロウィーンの不気味で、神秘的で、なんとも美しい雰囲気、それから、少年達のはずむようなわくわくする感じが行間に満ち満ちていて、とても良い気分で読んでいました。

少年達はピプキンをとりもどすことができるのでしょうか。
その方法の深み、厳しさ。そして、彼らの選択は、とてもとてもすてきだった――
ハロウィーン過ぎに読みましたが、読んでよかったです。

  >「どっちだった? <いたずら>か<もてなし>か?」
    「その両方!}少年たちは答える。