『指輪物語(5~7) 第二部 二つの塔』  J・R・R・トールキン 

旅の仲間が散り散りになり、第二部はどん底からのスタートになりました。
苦しい描写ばかりで、遅々として、進まない読書は、エントと二人のホビットの遭遇のところで、ほっとして、やっとゆったりできました。そして、ガンダルフが「白い衣」を纏って戻ってきたところからすっかり目が離せなくなりました。

6巻が一番おもしろかった。展開が早く、ピピンとメリーが語り手になった木の髭たちのアイゼンガルドでのくだりは、朗らかなユーモアを感じるし。まるで、飛陰に乗って駆けていくような爽快感でした。
しかし、セオデン王。この人は、以前は蛇の舌に簡単に丸め込まれ、今度はガンダルフの言葉をまたまたころっと信じて、数分前まで寵臣だったものが逆臣になってしまう、あまりにも単純ではないか。 実際、良かったーって思ったのですが。王様ってこんなもの? しっかりした重臣がいてよかったです。

7巻は、暗い夜のイメージ。一気に、読むスピードが鈍ります。
フロドの抱えたものがますます重くなり、悲壮感が漂ってきます。
しかし、暗い厳しい場面を読んでいても、滅入りきることはない。フロドの、そして、他の登場人物たちの使命感の強さ、ひたむきさに引っ張られるようにして、一歩一歩前進してきた。
旅を続け困難に直面するたびに、磨かれて、輝きを増していくフロド。ときどき発する人間離れした(ホビット離れした?)光に、却って不安になってしまいました。サムの心配は如何ばかりか。(ちらっと三蔵法師孫悟空を思ってしまった)
しかし、最後の方で、こんなことになろうとは。
そうだ、この本の主人公って指輪だったんだ、と思う。だからこんな「まさか」も起こってしまうんだ、と本当に思いました。
そして、このときのサムワイズ殿の決意が、次章でどのように展開されるのか、楽しみです。


刺激の強すぎることばや場面はなく、安心してついていける、という以上に、文章が上質なのだ、と思いました。
そして、神話や御伽話のいい匂いがする。
好きなフレーズは…

  >「さあ、行け、飛陰よ! 
   走れ、勇敢なる者よ、かつて走ったことがないほど速く走れ!…」
   ・・・・・・
   ・・・・・・
   次第に眠りに陥りながら、ピピンは不思議な感じを味わっていました。
   さながら自分とガンダルフが石のように静止したまま、
   走っている馬をかたどった彫像の上にまたがり、
   その馬の蹄の下をごうごうと鳴る風の音とともに
   世界がうねり去っていくのでした。


「旅の仲間」を読み始めたのは、まだ1月でした。思えばずいぶん、遠くまで来たような気がします。
2月中の読了をめざしていますが、どうなることでしょう。