『地球はプレイン・ヨーグルト』 梶尾真治

 

七つのSF短編集。
宇宙旅行あり、時間旅行あり、超能力あり、クローン人間もあり、宇宙人もやってくる。
物語はドタバタのお笑い、ロマンス、民話ふう、ちょっとスリラーっぽいのもあり、バラエティ豊か。一作読むごとに次を期待しながら、あっというまに七作読んでしまった。


強烈だ、と思ったのは表題作『地球はプレイン・ヨーグルト』
地球に不時着した宇宙人は「〈味覚〉としか呼びようのないものでコミュニケーションを行うらしい」とのことで、宇宙人代表団との会議に呼び集められたのは一流の料理人たちと、食通で有名な老人だった。
味が言葉になっていく面白さに、わくわくしていたものの、突然に舞台はひっくり返るのである。
この読後感。あと味の悪さというか、なぜこんなにも嫌悪感を感じなければならないのだろう。なんというところに連れてこられたのだろう……七編の物語の一番最後がこれか。口直しはもうないのだ。


別の意味で、何というところに連れてこられたのだろう、という感想をもったのは、『詩帆の消えた夏』
最初、物語の語り手にずっとむかむかしていた。喪った恋人への思いを切々と語る言葉もエゴ丸出しに感じて。物語を読み進めるうちにある方向、つまりどう考えてもどん詰まりでしかないところに向かっているのを感じて、ハラハラしていたが……。


『清太郎出初式』よかった。
H・G・ウェルズの『宇宙戦争』でイギリスを襲撃した火星人たちが、同じ時期(明治33年)に、日本の九州中央部にも上陸、侵略を開始していたのだ。
なにもかもを失い、着のみ着のまま逃げてきた老若男女五人が、肩寄せ合って、徐々に家族になっていく。平時には極つぶしの遊び人だった清太郎を中心に、民話ふうに描かれるのがよかった。


一番好きなのは『さびしい奇術師』
奇術師が舞台の上で、シルクハットから取り出して見せるのはウサギか鳩か、それとも……。
実は奇術師は超能力者である。
奇術師は舞台の上だ。一番短い物語であるが、見守る人間にとって、あるいは舞台の上の奇術師にとっては、なんという長い時間だっただろう。
哀感と優しさがこもっている。笑ってしまいたい。そして拍手したい。