2月の読書

2月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:2947

ルイジンニョ少年: ブラジルをたずねてルイジンニョ少年: ブラジルをたずねて感想
下宿先やんちゃ坊主ルイジンニョと過ごしたエイコさんのブラジル。おおらかで明るい町の匂いを吸い込み、少年のしたたかさを楽しむ。物語はカルナバルの場面で終わる。賑やかな太鼓やタンバリンが胸に響いている。サンパウロの町の熱気が、人(とりわけ子ども)の姿になる。打楽器のリズムになる。
読了日:02月27日 著者:かどの えいこ
イコ トラベリング 1948-イコ トラベリング 1948-感想
「雑にはいろいろとまざってる」「綺麗なとこから綺麗なものはみつからない」という言葉が心に残った。沢山の雑用から思いがけない所への切符を発見したり。「軍国主義、民主主義、自由主義。。(中略)主義ってどこか、押しつけがましい感じがする」も心に残る言葉。イコさん、まだまだ続く長い長い旅の途上
読了日:02月25日 著者:角野 栄子,今日 マチ子
肉体の悪魔 (新潮文庫)肉体の悪魔 (新潮文庫)感想
極端な幼稚さと聡明さ、未熟さと早熟さとを、折々の丁寧な心情の描写で、浮かび上がらせていく。少年の姿の中に押し込められた化け物が通る。それも、どんどん大きくなっていくようで、ぞっとする。大人から守られる、子どもの園の住人の間に要領よく紛れ込んで。だけど、どこまでも郷愁を帯びた美しい文章なのだ。
読了日:02月24日 著者:ラディゲ
蜘蛛の巣 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)蜘蛛の巣 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
二つの単語を組み合わせた言葉、たとえば、カレー・ライスと、前後を逆さにしたライス・カレーなら、どっちだって意味は同じだけれど、国家警察と警察国家、女の政治家と政治家の女などは、はっきり違う、という話、おもしろかった。そして、印象的な「ザマアミロ!」には、にやにや笑いがとまらない。
読了日:02月20日 著者:アガサ・クリスティー
検察側の証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)検察側の証人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
逆転を繰り返す法廷劇で目を離せない。すました顔(?)で舞台の証人席に立つ人びとは、最初は仮面をかぶっているようにも思える。検事に、弁護士に、糾されるたびに、次々に新しい表情が現れ、仮面が溶けていくようだ。これで決定的だな、と観念しかけても……さて、転がされに転がされて、この結末をどう受け止めようか。
読了日:02月19日 著者:アガサ・クリスティー
いきている山いきている山感想
著者が山そのものではないか、と思えてくる。著者は、山について書いたのか、自分自身について書いたのか、どっちだろう。ひたひたと豊かさが満ちてくる。ゆるやかに変化を受け入れながら、自身の根っこは変化することなく存在しつづける。そこに思いを馳せつつ、満たされていく。
読了日:02月17日 著者: 
彼の名はウォルター彼の名はウォルター感想
おとぎ話の不思議は、ほんとうに比喩や象徴で説明できるものなのか。どうしても説明できないあれらのことは……この物語のなかで、あの本を閉じたときに、「これで終わりじゃないぞ」という言葉とともに続きが始まったように、この物語を読み終えたとき、何かが始まる。
読了日:02月16日 著者:エミリー・ロッダ
イノック・アーデン (岩波文庫 赤 226-1)イノック・アーデン (岩波文庫 赤 226-1)感想
悲劇の始まりは、逆向きに思える二つの願いを、どちらも妥協せずに叶えようとした事ではないか。美しい物語詩だ。望み潰えた一人の人間が、遠くから故郷(幸福のありか)を思いやる場面、あるいは人知れず暗く冷たい場所から、明るくあたたかい場所を覗き込む場面など……手の届かない美しい描写が、男の孤独を、悲劇を際立たせる。
読了日:02月14日 著者:テニスン
テーブルの上のファーブルテーブルの上のファーブル感想
テーブルの上がそのまま伏線のカタログみたい。伏線だけ並べてもこの読み応え。ずっとこの調子でページをめくり続けるのもいいと思っていたけれど。広げられた伏線の回収方法は一通りではない。縦横斜めに回収されたかと思えば、それがまた新たな伏線に変わっていくこともある。さらに……この本が、たぶん未来に対する伏線。
読了日:02月11日 著者:クラフト・エヴィング商會,坂本 真典
雪の日のたんじょう日雪の日のたんじょう日感想
子に共感はしても、中途半端に慰めたり遠慮したりしない両親と、もくもくと自分にあてがわれた仕事をこなす子どもの関係がいいなあと思うのだが、同時に、全力でぐんぐん大きくなっていく子どもを、力いっぱい支える大人たちがいるっていいものだと思う。雪、ほんとうにきれいだった。積もった雪は、こんなに眩しくて。
読了日:02月09日 著者:ヘレン・ケイ
ぼくとお山と羊のセーターぼくとお山と羊のセーター感想
家族とともに働くことが、生活への愛しみと結びついている。お蚕さんも、動物たちもかわいいのだ。匂いや音さえも愛らしいのだ。自分が家族に必要とされている充実感。そして、働きながら、楽しみや遊びを見つけるのがなんて上手なのだろう。どんなにお金を出しても決して買うことのできない、特別の豊かさ。
読了日:02月06日 著者:飯野和好
グリーン・ロード (エクス・リブリス)グリーン・ロード (エクス・リブリス)感想
この家(家族)が彼らの原点だ。自分が嘗て根を張った場所を、ここだったと確認できることには意味があると感じている。その場所は変化し、なんなら消えてしまっても。そのための寄せて(戻って)、返して(また出ていく・いける)、なのだろう。そこにどんなドラマがあったとしても。この先にどんな課題が待っていたとしても。
読了日:02月05日 著者:アン・エンライト
星に仄めかされて星に仄めかされて感想
それぞれの「言葉」との関わり方がその人らしさをあらわしている感じ。ゆっくりの物語ではあるが、時には突然飛ぶ。まるで、小さな物語の島から隣の島へ瞬間移動するような感じ。壊れて欠片になって、飛び散っていく。このうえなく自由で柔らかなイメージ。それらの欠片が集まって別の形になろうとしているような。
読了日:02月03日 著者:多和田 葉子
ロンドン・アイの謎ロンドン・アイの謎感想
他の人とはちがう働きをする脳の持ち主だったから、解くことが出来た謎だったけれど、テッドが解いたのは事件の謎だけではなかった。そのことが、最高に気持ちのよい読後感を連れてくる。少年の徒名ニークは「くそまじめなおたく野郎(ナードギーク)」の略語ではなくて、「ユニーク(個性的)」の略だ。
読了日:02月01日 著者:シヴォーン・ダウド

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