『カメレオンのレオン ないしょの五日間』 岡田淳

 

カメレオンのレオン三作目。
くすっと笑って、ああ楽しかった、と思える魔法が起こる、学校(裏の世界も含めて)が舞台のファンタジー


桜若葉小学校のクスノキは、あちらの世界とこちらの世界の通り道。あちらの世界のものが、こちらの世界に迷い込んで起る混乱を回収するために、あちらからやってくるたんていが、カメレオンのレオン。普段はくたびれたコートに山高帽、目の大きな男の人の姿だけれど、どんな姿にも変身することができる。小さなテントウムシにも、教頭先生にも。


これまでは、こちらの世界がおもな舞台だったけれど、この本では、あちらの世界が舞台になる。(レオンはやってくるのではなくて出かけて行く)

 

桜若葉小学校から、クスノキで繋がっているのは、サクラワカバ島という小さな島だ。
レオンがこの島でどんな暮らしをしているのかもわかってきた。彼の友だちのヒキガエルのヒキザエモンのことも。
ここに暮らす人たちについては、登場人物の一人のセリフをそのまま引用すると……
「桜若葉小学校がある世界では、このサクラワカバ島がある世界とちがって、一種類の人がすんでいる。人の姿しかできない人だけがすんでいる。
ところがサクラワカバ島なら、ひとの姿しかできないひとのほかに、ヒキガエルのひととか、ネコになったりひとになったりするひととか、いろんな姿になれるカメレオンのひとなんかがいるんだ」
ついでに付け足せば、こちらの世界では、だれもあちらの世界のことは知らないのに、あちらの世界では、誰もが、こちらの事を知っている。
ヒキガエルのヒキザエモンは、サクラワカバ島の歴史の先生だが、あちらとこちら、両方の歴史を教えているくらいだ。


これまでの二作では、レオンが私たちの世界(桜若葉小学校)のお客だったのに、今回は、読者の私もレオンの側にいる。桜若葉小学校にレオンと一緒にでかけるときは、お客さんみたいな、なつかしいところに里帰りしたような、変な感じだ。


今回のお話は三つ+おまけのヒキザエモンの冒険物語が一つ。
おもしろかったのは、第一話の「ピョンの魔法」。ある魔法が、クスノキの向こうにおいてきぼりになってしまう。レオンは、魔法をさがしにでかけていくのだけれど……。事を収束するレオンの一計が楽しい。


おまけの「ヒキザエモンの冒険」もおもしろかった。
「ゆるしてつかわす」という言葉がいいな。