『てがみをください』 山下明生(作)/村上勉(絵)

 

「ぼく」のうちのゆうびんばこにかえるがひっこしてきた。
そういえば、うちの郵便箱にも、しばらくの間、小さなアマガエルが住み着いたことがあったっけ。
家族の誰かが手紙をとりにいくたびに、まだいるかなあ、あ、いたいた、とにこにこして、かえるいたよと報告し合ってひとしきり楽しかった。
いつのまにかいなくなってしまった。その後、どこに引っ越して行ったのだろう。


「ぼく」のうちの郵便箱はイチジクの樹にかけてある。
みどりいっぱいの画面に、小さな赤い色がかわいらしい。
郵便箱には手紙が届く。かえるのうち(郵便箱)にきた手紙だからかえるのものだと、かえるはいばっていうのだけれど……


誰かから手紙が届くってうれしい。
誰かが、わたしのために、わたしに宛てて書いてくれたんだ、と思うだけでほんとにうれしい。
だからね、かえるに宛てた手紙も届くといいなあ、と思う。
かえる、どこかで自分あての手紙がとどくのをまっているだろうか。偉そうな顔して。