『短編少女』集英社文庫(編)

 

 

『てっぺん信号』三浦しおん
『空は今日もスカイ』荻原浩
『やさしい風の道』道尾秀介
モーガン中島京子
『宗像くんと万年筆事件』中田永一
『heircut17』加藤千恵
『薄荷』橋本紡
きよしこの夜』島本理生
『イエスタデイズ』村山由佳

小学生から高校生まで、少女をテーマにした短編を集めたアンソロジー
先に読んだ『短編少年』の姉妹編、と思っていいのだろう。


モーガン』で、授業を抜け出した二人の少女が、街道をそれて獣道みたいな山道を忍者みたいに駆け抜けていく場面が好きだ。
モーガン、うちら、このままどっかへ行っちゃって、戻ってこなくたっていいね。ずーっと二人きりで、世界を放浪していたっていいね」
が好きで、気持ちは少女たちと一緒に風を切っていく。
この後にたとえどんなに重たい展開が待っていたとしても、ここでぐんと浮上した気持ちは決して下がらないのだ。


『宗像くんと万年筆』はミステリ。
教室内の盗難事件の犯人にされてしまった少女は不登校になってしまう。
彼女の無実を証明したのは、家が貧乏で風呂にも入れないような少年、宗像くんだった。
『短編少年』にも出てきた、子どもを「決めつける」教師が、ここにも登場して、疑われた子どもは、立つ瀬がない。真実を追求しようとする子も、それ以前に別の決めつけを受けている。
(こういう教師の登場は、短編少年・少女あわせて18編中、これで確か三人目だ。むしろ、教師というものをあまりに単純化して「決めつけ」ているのではないのか、と思わなくもない。)
似たようなこと(盗難とかじゃないとしても)はきっとどこでも起こっている。解決の糸口もないまま、耐えている子がいるんじゃないか、と考えてしまう。
真犯人の胸中を思いやれば、そこに実はもうひとつのミステリが……


少女の日々はいずれ終わるのだ。
最後に『イエスタデイズ』で、ここまでに登場した九つの短編の少女(少年も)ともに、大人になったようで、微笑んでしまう。


『短編少年』『短編少女』二冊続けて読んだ。
それぞれ九編づつの短編。
『少女』のほうはそのうち六編が恋愛がらみ(+恋愛前夜と思われる一編)
『少年』のほうには、恋が描かれているのはただ一編だけだった。
もがいたり足踏みしたり、ときには後ずさりしながら、自分の道を探す子どもたち。その過程に恋愛が入ってくる率が、少女のほうに圧倒的多いことに驚く。たまたまかもしれないけれど。