9月の読書メーター
読んだ本の数:25冊
読んだページ数:5820ページ

記憶の国の王女記憶の国の王女
物語があって、読者がいて、はじめて、物語が生きる、生き続ける。本の形は変わっても、内容も忘れかけていても、その物語を愛した思い出は残っています。わたしにも、大好きだよ、ありがとう、と伝えたい本の中の人たちがいます。
読了日:09月30日 著者:ロデリック タウンリー
1ねん1くみの1にち1ねん1くみの1にち
がたがた机を動かす音がする。子どもたちの声がする。給食の匂いがする。ピアニカの音もそろって聞こえる。机を後ろに運んで教室掃除のほこりっぽい匂い。放課後の約束。教室の様子も給食のメニューも年月とともに変わる。でも、ずっと変わらない、まるごとの学校の雰囲気に、思わずにこにこしてしまいます。
読了日:09月29日 著者:
ブロデックの報告書ブロデックの報告書
とてもしんどい本でした。この物語すべてを一人の人の心の中の葛藤の物語として読みました。わからない部分も含めて。そして、「憎しみから美が、純潔が、優雅が生まれることもある」というプップシェットの存在。おいぼれ犬だとずっと思っていたものが実は優美な狐だった。などが心に残ります。これを勝利と信じたい。何よりも大きな確かなものを取り戻したのだと。
読了日:09月29日 著者:フィリップ・クローデル
くろて団は名探偵 (岩波少年文庫)くろて団は名探偵 (岩波少年文庫)
街かどの古くてごちゃごちゃした建物、窓やドア、ポーチ、広告塔や石畳。そして駆けていく子どもたちが、とてもかわいいくてちょっと懐かしい感じ・・・いいなあ、こんな街をこの子たちといっしょに探検したいよ。絵に仕込まれた小さな謎を解きながらそれをヒントに物語は進む。全部解けたら名探偵だそうですが、私は並の探偵にもなれません。でも、とっても楽しかった。
読了日:09月27日 著者:ハンス・ユルゲン・プレス
すべての小さきもののために (Modern&Classic)すべての小さきもののために (Modern&Classic)
奇妙な読後感です。後味は悪くないはずなのに、この引っ掛かり。ちいさなもの、とるにたりないものへの賛歌のようでありながら、暗さや危なさを隠し持ってもいるようで、妙にそわそわと落ち着かない気持ちなのですが・・・。
読了日:09月26日 著者:W・ハミルトン
パリの本屋さんパリの本屋さん
シェイクスピア&カンパニ-書店あるかな・・・ほら、やっぱりあった! うれしい!・・・だけど、こんなにたくさんの個性的な書店書店書店の中にあっては、ごく普通(?)に見えてしまうから不思議。ページを繰るたびに現れるたくさんの書棚にわくわく。パラダイスのような本でした。
読了日:09月26日 著者:ジュウドゥポゥム
初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)
ただおもしろしいだけじゃない。しっとりとした深み。それは、登場人物の生き生きした描写のおかげかもしれません。ことに15歳のポールとスペンサーが心を通わせていく過程が、いいな。読後は、しみじみとしたせつなさと、すかっとした爽快感とを同時に味わっていました。ああ、まさに初秋ですね。
読了日:09月25日 著者:ロバート・B. パーカー
夕凪の街桜の国夕凪の街桜の国
ほのぼのとした風景のなかに時々混じる何のセリフもないコマ。ぞくりとするあのコマ。彼女たちは、「戦後」の日々に、絶えずあれをみていたのか。それでも、「夕凪の街」のあとに置かれたのが「桜の国」。だから、あえて書きますね。これは希望の本なんだと。おとうさんのことば「お前が幸せになんなきゃ姉ちゃんが泣くよ」・・・だから、胸を張って、幸せになってください。幸せになろうよね。夕凪のあとには空気も動く。風も吹く。
読了日:09月24日 著者:こうの 史代
パワー (西のはての年代記 3)パワー (西のはての年代記 3)
三冊の本を読み終えて、思うのは、文学、詩、物語の凄み、輝き。人を解放し、自由にし、さらに遠く高く深く旅をさせる文学の可能性・・・ガヴィアは、たぶん、その入り口に今たどりついたのではないか。メマーも。そして旅の途上にあるオレックも・・・もっと遠くはるかな道を歩き続けるのだろう。ああ、本をもっと大切に大切に読みたい。(←すぐ忘れるくせに)
読了日:09月24日 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン
ヴォイス (西のはての年代記 2)ヴォイス (西のはての年代記 2)
人種。宗教。慣習。・・・それらが違うことが問題なのではない。問題は、違いを受容できるかどうか、なのだろう。ただ一人二人の英雄が現れて、どうにかなるわけではない、厄介な人の心。「解放されるために解放する」という言葉に打たれます。そして、本。ことに詩や物語に寄せる賛辞が美しくて、好きです。
読了日:09月21日 著者:アーシュラ・K. ル=グウィン
ギフト (西のはての年代記 (1))ギフト (西のはての年代記 (1))
目隠しして閉じこもる日々も、決して無駄な時間ではないのだろう。必要な時間だったのかも。見えないことで、ほかの感覚が研ぎ澄まされるのかもしれない・・・。開かせたい、と強く願っていた天分ではなくて、別の天分が人知れず、花開いていくこともあるのかもしれない。「ギフト」ってなんだろう。
読了日:09月19日 著者:アーシュラ・K. ル=グウィン,Ursula K. Le Guin
シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々
彼らに共通するのは、みなここでは他所者で旅人であるということ、ここは、束の間の居場所だということ。そして、彼らをつなぐものが「本」。一風変わった青春記ともいえる? 初めて訪れた本屋で、『アリス』の世界にまぎれこんだのではないかと思うようなお茶会。行ってみたいなあ。カウンターで買った本にスタンプを押してもらいたいなあ。
読了日:09月17日 著者:ジェレミー・マーサー
ガラスの動物園 (新潮文庫)ガラスの動物園 (新潮文庫)
ガラスの動物たちの透明さと脆さ。取り返しはつかないけれど、壊れる前の束の間の美しさがかけがえなく思いだされる。何とも言えないやりきれなさでした。
読了日:09月15日 著者:テネシー ウィリアムズ
アニーのかさアニーのかさ
「かさ」ってそういう意味だったんですね。まずは、「かさをさしている」と気がついたところで、自分のかさをほんの少しでも閉じる努力をしなければ、人のかさを閉じさせることなんてできないかもしれない。表紙の絵のアニーのかさは、赤くてかわいらしいのです。そこに、降り注ぐ光の明るさ優しさが心に残ります。
読了日:09月13日 著者:リサ・グラフ
みんなのすきな学校 (講談社の翻訳絵本―ピュア・セレクション)みんなのすきな学校 (講談社の翻訳絵本―ピュア・セレクション)
校長先生、最高で大好きな学校の、みんながどんな表情でお話を聞いているか、ちゃんとみてね。作者紹介のクリーチの言葉がすてき。「勉強はだいじだけど、草原にねそべって、雲を眺める時間もだいじ」
読了日:09月13日 著者:シャロン クリーチ
世界の果てのビートルズ    新潮クレスト・ブックス世界の果てのビートルズ 新潮クレスト・ブックス
容赦ない自然、暴力と飲酒、あからさまな性、そこに生きる人々(虐げるものも虐げられるものもなんと逞しい)をコミカルに描写しながらも、滲み出てくるのは、共感、悲しみ。醜くて、汚くて、そして封じ込められた世界を突き破るような熱く強烈なエネルギーのほとばしりが静まったとき、浮かび上がってくるのは、ただ幻想的な美しさでした。
読了日:09月12日 著者:ミカエル・ニエミ
夏の終わりに夏の終わりに
物語は、おばさんのわたしには大照れですが、美しい舞台の上の、ちょっと古風でロマンチックなおとぎ話、と思いました。物語よりも風景の美しさ、住まいの調度や庭などの描写が素敵だった。「どんなところに住み、どんな本を読み、どんな絵を飾っているのか知るまでは、その人をほんとうに知ることにはならない」との言葉に、なるほどね、と思ったのでした。
読了日:09月10日 著者:ロザムンド ピルチャー
王への手紙 (下) (岩波少年文庫 575)王への手紙 (下) (岩波少年文庫 575)
うれしかったのは「帰り」の物語。旅の途上に出会った友人達との次々の再会がすてきなカーテンコールのよう。印象に残る人物は道化師テイリロ。「騎士になるのに剣も盾も身につける必要はない」という言葉が人物を語る。ああ、おもしろかった。良い旅だったよ。
読了日:09月09日 著者:トンケ・ドラフト
王への手紙 (上) (岩波少年文庫 574)王への手紙 (上) (岩波少年文庫 574)
出会い、道連れ、追ってくるもの。敵味方敵味方、それから友情。遠い道を行く少年の健気な使命感にどきどき。ときどき、見開きの地図で現在地を確認すれば、ああ、まだこんなところにいるのか。果てしない道、困難な冒険の先行きに気が気じゃなくて、早く下巻へと、心逸ります。
読了日:09月08日 著者:トンケ・ドラフト
カドカワ学芸児童名作  ここから どこかへカドカワ学芸児童名作 ここから どこかへ
へやのすみ、いいにおいのほうのおなら(こんな種類があるのか)、からっぽ、文字おばけ、かみさまおばけ・・・人間に忘れられたり、いらない、と思われたりして、おばけになったものたちの話が、ほんわかのんびりやさしくて、少し悲しい。みんなのなかに「きりぴすけーむ」が戻ってきたら、おばけはおばけじゃなくなるのかな。おばけたちは、おばけでいることを楽しんでいるみたいだけど。
読了日:09月06日 著者:谷川 俊太郎
本という不思議本という不思議
「物語がくれるのは、どんな結末でもなくて、はじまりです。出口が入口であるような世界が子どもの本の世界です」 本をぱたんと閉じた瞬間から始まる冒険がある。物語を追って旅してきた読者は、今度は自分の言葉で新しい冒険の旅に出るのだ、そう思うと、嬉しくなってしまいます。このところ読書も停滞気味でしたが、本とまた近しい関係になれそうです。ありがとう。
読了日:09月05日 著者:長田 弘
マグナス・マクシマス、なんでもはかりますマグナス・マクシマス、なんでもはかります
わたしには無味乾燥にしか見えない数字ですが、マグナス・マクシマスには、どんなふうに見えるのだろう。どんな音楽が聞こえるのだろう。彼が新しく知ったことは、わたしたちにも理解できる素敵なこと。彼がそれを知ったことは喜ばしいことなのですが、心ひそかに、ずる〜い、と思ってしまう。マグナスは両方の美しさを知っているのに、わたしは片方(それさえ自信を持っては言いかねる)しか知らないのだもの。
読了日:09月03日 著者:キャスリーン T.ペリー
あの空の下で (Y.A.Books)あの空の下で (Y.A.Books)
「この道のむこうに」の続編。いつか家族みんな一緒に故郷のメキシコに帰ることを夢見ていた父のやるせなさは、身にしみます。それでも手放してやるしかないのだよね。巣立った子どものなかに、父が大切に思っていた家庭は息づき、もっと大きな夢の中で実を結んでいくのだもの。読後、巻末の作者紹介欄、彼の学歴、現在の職業を、感無量の思いで眺める。
読了日:09月03日 著者:フランシスコ ヒメネス
この道のむこうに (Y.A.Books)この道のむこうに (Y.A.Books)
メキシコからアメリカに不正入国した一家。季節労働者として転々と各地をまわるその日暮らしの希望のない日々・・・のはずなのに、そして、実際、苦しく辛いはずの日々なのに、希望と喜びの物語になっている。著者の自伝だそうです。支えあう家族、そして、出会った素晴らしい教師や友人たち、人は人によって豊かになれるのだ、と感じています。
読了日:09月02日 著者:フランシスコ ヒメネス
ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)
あっぱれジョゼ。彼女は最初から、自分の生活の不安定さを知っている。いつでもどこでも簡単に崩れ去りうるものだと覚悟している。さらには、「完全無欠な幸福は死」だという。生活のなかの小さな死を、そしていつかくるはずの大きな死を明るく澄んだ目でみつめながらの日々はかなり壮絶なものだと思う。
読了日:09月01日 著者:田辺 聖子

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