『身近な鳥の生活図鑑』 三上修

 

身近な鳥の生活図鑑 (ちくま新書)

身近な鳥の生活図鑑 (ちくま新書)

  • 作者:三上 修
  • 発売日: 2015/12/07
  • メディア: 新書
 

 

この本で取り上げられているのは、スズメ、ハト、カラス(「他の鳥たち」として、ツバメ、セキレイコゲラが少しだけ)……そういう鳥たちなら、わざわざ気を付けて見ようと思わなくても、いつだって、生活しているこのあたりにいるじゃないか、と思ったりするではないか。
だけど、ほんとうに彼らの事を気をつけて見た事があっただろうか。


たとえば、親スズメが、(巣立ったばかりの)子スズメにしばらくの間、どんなうに気を配っているのか知っていただろうか。
スズメが砂浴びをするように、活字を浴びる、という奇妙なしぐさをすることを知っていただろうか。
どこにでもいる、と思っていたスズメが数を減らしていることや、その原因を知っていただろうか。


それからハト。
カワラバトから通信用としての伝書鳩、ドバトが生まれたのだそうだ。どこで放しても自分の巣へ必ず帰るハトたち(たとえば北海道から東京まで)、どうやって帰る方向を知るのだろう。


カラスなら、ハシボソカラスとハシブトカラスを簡単に見分けることができるだろうか。どちらもカラスで、似たようなところに住み、似たような声で鳴き、似たようなものを食べ……と思っていたけれど、実はそれぞれに微妙な差異があることを知った。あれこれの条件から、あれはハシブト、あれはハシボソではないか、と当ててみられたら楽しいだろう、と思う。


野鳥であれば、森や野に住むほうが暮らしやすいであろうに、都会に住むことを選んだ鳥たちは、どのようにメリットとデメリットを秤にかけたのだろうか。
そして、町に、鳥とともに暮らすわたしたち人間は、さまざまな軋轢に、どう対処したらいいのか。
十人十色の考えのひとたちのなかで、著者は、「いろいろな考え方があって、ただ一つの正しい答えはない」としながら、「どちらの立場の人も、相手の考えを尊重し合える「ゆるやかさ」があるとよいなと思います」という。この考え方、いいなあ、と思った。


そして、どんな町のどんな場所にどんな鳥が多くいるのかということに気をつけて見ていくと、その町の歴史を知ることにもつながるという話は、ミステリアスでわくわくした。
(たとえば、スズメの側のさる事情により、お寺にスズメが多くいるが、神社にはあまりいないそうです。)