『トラといっしょに』 ダイアン・ホフマイアー(文)ジェシー・ホジスン(絵)

 

トラといっしょに (児童書)

トラといっしょに (児童書)

 

 

美術館で出会った絵の中のトラと、トムは、じっとみつめあった。
それから、トムは家に帰って、トラの絵を描いた。
夜になったら、トラは、眠っているトムのところにやってきた。
大きくて堂々としたトラ、長いしっぽをゆらしている。でも、その目は穏やかでやさしい。
トムはトラの背中に乗って、森へ出かける。月の輝く夜だ。


そこかしこに隠れているクマやライオン。
泳いで渡らなければならない大きな川。
おばけやしきや高く上がるぶらんこのある遊園地……
どれも、トムにとってはこわいものばかり。だけど、トラがいっしょにいる。
「トラはこわくない」と言い放つトラは頼もしくて、いっしょにいるトムはほんとうに怖くなくなる。そのとき、目の前に見えているものの姿は、最初とは心なしか違っている。


トラによりそっているトムを見ていると、トラとトムとが一体に見えてくる。
なにかを始めるときに怖くなってしまうトムの内側から、トラはいつでも「トラはこわくない」と声をかけてくれるだろう。
トムが「もう なんにもこわくない」というまで、一緒にいてくれるだろう。
こんなトラといっしょに、こどもの時代を過ごせれば幸せだと思う。
誰でもトラに会えたらいいのに。
トラじゃなくても、その子が求める別の姿をしたものが、その子のそばにいてくれればいいのに。


最初にトムが見ていた美術館の絵は、アンリ・ルソーの「不意打ち」またの名を「熱帯嵐のなかのトラ」というそうだ。