10月の読書

10月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:6644

ハロウィーン・パーティー (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ハロウィーン・パーティー (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
クリスティー六冊目。作者の手の上で右往左往するのも楽しいが、何よりも、この本の楽しみはハロウィーン。賑やかなハロウィーン・パーティーと、雰囲気を湛えて神秘的に静まる庭、そして殺人。不思議なアンバランスの集まりが、逆に不思議な均衡を生み出しているようで、この物語に独特な空気を与えているようだ。
読了日:10月30日 著者:アガサ・クリスティー
小さな王さまとかっこわるい竜 (おはなしルネッサンス)小さな王さまとかっこわるい竜 (おはなしルネッサンス)感想
とぼけていて、かわいらしくて、かっこよくて、ちょっとやさしい。うれしいのは、 王さまなのに、千人の子どもたちに混ざると、どれが王さまだかわからなくなること。千人のおかあさんの作るホットケーキをみんなで分け合ってたべること。なによりも、歴代の王さまのなかで、この王さまが多分一番しあわせだ、といえること。
読了日:10月29日 著者:なかがわ ちひろ
旅の冒険―マルセル・ブリヨン短篇集旅の冒険―マルセル・ブリヨン短篇集感想
美しい文章。彼らの旅はいったいなんなのだろう。なぜここに着いてしまったのだろう。手の込んだ案内に導かれるのは暗い場所ばかりだ。そんなところに行ったらいけないよ、きっと怖ろしいことが起こるよ、戻れなくなるよ、と読みながら思うけれど、でも見てみたい、旅人がその扉を開けたその先に何があるのだろう、と期待してもいる。
読了日:10月28日 著者:マルセル ブリヨン
リンドグレーンの戦争日記 1939-1945リンドグレーンの戦争日記 1939-1945感想
「戦争は終わる」「もうすぐ終わる」繰り返される言葉を読んでいると、長いなあ、と思う。生活が大揺れに揺れる海原の上にあったとしても、いえ、激しく揺れれば揺れるほどに、規則的な心臓の音、寄せて返すを続ける波の音を数えるような文章が必要なのかもしれない。それでも本当にに戦争は終わる。『長くつ下のピッピ』が生まれる。
読了日:10月27日 著者:アストリッド・リンドグレーン
世界のまんなかの島 ~わたしのオラーニ~世界のまんなかの島 ~わたしのオラーニ~感想
「わたし」のお父さんが生まれたオラーニ村には毎年家族そろって出かけたそうだ。 高い山のなだらかな斜面に広がった村全体を、ちょっと高いところから見下ろす見開きの絵がとても美しい。 「わたし」は、読者に、この村を案内するのが得意でしかたがないのだろう。私のオラーニはどこにあるだろうか、と考えている。
読了日:10月26日 著者:クレア・A・ニヴォラ
結ばれたロープ結ばれたロープ感想
ロープ一本で繋いで相手の命が自分に委ねられ自分の命が相手に委ねられていることを確認する。登山に孤独なイメージをもっていたけれど命がけのチームプレーだった。ダイナミックに動いていく空、切り立った岩々、山々に抱かれた小さな村の様子が、光のなかできらめき、色を変えていく様を、吸い込むような気持ちで味わっていた。
読了日:10月25日 著者:ロジェ・フリゾン=ロッシュ
ナイルに死す (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ナイルに死す (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
広大な大地に浮かび上がるような遺跡、逞しい土産物売りの子どもたち。むんむんする暑苦しさのなか、ゆったりとナイル川が流れ、クルーズ船が行き来する。犯人は、動機は、と、それなりに推理し、外れて、驚き、それ以上に、探偵はどう解決するのか、ということが興味深かった。洒落もの、自惚れ屋の一面、ポアロの温かさがしみてくる。
読了日:10月23日 著者:アガサ クリスティー
ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙感想
もうすぐ15歳になるソフィーは、面白いと言っているが、わたしには難しい。「わからない」と思うとき、感じるのは閉塞感だ。物語が向かう先にあるのは、この閉塞感からの解放だ。印象に残る言葉「ぼくたち自身がぼくたちの生の意味をつくっていかなくてはならない。実存するというのは、自分の存在を自分で創造するということだ」
読了日:10月21日 著者:ヨースタイン ゴルデル
ヘディングはおもに頭でヘディングはおもに頭で感想
ゆるゆると語られる物語は、大きく盛り上がるわけではない。たいしたこともなく過ぎていく毎日。それは、ほんの少しばかりの風が吹いたら、それを敏感に感じ取れるということでもあると思う。少しの風に吹かれて、ああ、いい風だな、と思う。その「いい風」の心地良さは、結構あとあとまで続くのだ。
読了日:10月19日 著者:西崎 憲
ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
連続殺人の物語なので、事件のたびに登場人物が増える。後半はとくに大挙してどどーっとかけていくイメージで、飲み込まれまいとするのが大変。だけど、ほっと息つきながら迎えるフィナーレはちょっと嬉しい。びっくりのあとの気持ちの良いあと味を、今、静かに楽しんでいる。
読了日:10月18日 著者:アガサ・クリスティー
幸福について (光文社古典新訳文庫)幸福について (光文社古典新訳文庫)感想
巻末の「解説」に助けてもらいながら読む。現実世界の出来事は客観と主観から成り立っていること。その人の内面が豊かであれば「それ」は、豊かなものになるだろうし、貧しければ、それなりのものになってしまう。「まずまずの幸福」の意味も、自分自身(主観)の豊かさで、ずいぶん違ったものになるのだろうな。
読了日:10月17日 著者:アルトゥール ショーペンハウアー
ゆゆのつづきゆゆのつづき感想
大人になった由々が始める、あの日のゆゆの続きの話はちょっと違う。子どものゆゆが未熟だったかどうかではなくて。大人の胸のうちですっかり大人しくなってしまっている過去の子どもに(とっくにいなくなっちゃったと思って忘れていた子どもに)ほらほら起きておいで、と呼びかけているような物語だった。
読了日:10月15日 著者:高楼 方子
安楽椅子の釣り師 (大人の本棚)安楽椅子の釣り師 (大人の本棚)感想
釣り師たちが釣っている(?)魚以外のものが羨ましくて釣り人ではない自分のことを残念に思ったりする。釣りの事を書いているのにその周辺に興味があるなんて、失礼かなとも思うけれど、案外、著者たちも本題の釣りよりも周辺について書くことのほうを楽しんでいるのではないかと思ったことが何度もあったから、きっとこれでいいのだ。
読了日:10月14日 著者: 
グーテンベルクのふしぎな機械グーテンベルクのふしぎな機械感想
印刷機が発明されたこと、最初の頃の本は何からどのようにできていたのかを、こんなに美しい絵本で知るのはうれしいことだ。そして、こうして生まれた本が、以後500年もの間、ほとんど姿を変えることもなく続いている。途方もない時間だ。グーテンベルクの発明がどんなに素晴らしいものだったかと思う。
読了日:10月13日 著者:ジェイムズ ランフォード
もみじのてがみもみじのてがみ感想
動物たちの出会いのさいの掛け合いが素朴でなんともいいな。「やあ りす いたのか」……「ねずみ いってみるか」水分をたっぷり含んだ筆がさあっと走ったような深い森は、静かなのにエネルギッシュで隅々までが弾むようだ。黒っぽい画面にちらっと見える鮮やかな小さな赤も、言葉を失うほどの見事な一面も、本当に美しい。
読了日:10月11日 著者:きくち ちき
第九の波 (韓国女性文学シリーズ8)第九の波 (韓国女性文学シリーズ8)感想
町が大きな黒い穴をあけて、そのなかに人を引き摺り込もうとしているようだった。 だけど、この暗がりに風穴を開けるのは、その暗がり自身なのだ。暗い穴から吹いてくる風はどろどろと気持ち悪い。けれど、穴は穴だ。閉塞感の中心に風を通す。私は、登場人物たちの思いがけない強さに打たれながら、風の行く先を見守っている。
読了日:10月10日 著者:チェ・ウンミ
オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
だけど、犯人がわかり、犯行の動機も犯行の手順もわかっていても解決にはならないんじゃないか?できれば解決などしないほうがいいのではないかとさえ思った。正義って何だろうと考えて、そう考えてしまうような背景がそもそもあんまりじゃないか。ポアロはこの事件にどう決着をつけようとしているのか。探偵は孤独だとつくづく思う。
読了日:10月09日 著者:アガサ クリスティー
詩画集 プラテーロとわたし詩画集 プラテーロとわたし感想
音楽とともに朗読するためにスペイン語の語順のままに翻訳された詩を歌うように読む。三音でプラテーロ。山本容子さんのエッチングは淡いオレンジ色。『十一月の田園詩』に添えられた絵が好き。暖炉にくべる松をのせたプラテーロと生きた松の夢をのせたプラテーロと。こういう形で『プラテーロとわたし』にまた会えたことが嬉しい。
読了日:10月07日 著者:フアン・ラモン ヒメネス
移動図書館ひまわり号移動図書館ひまわり号感想
図書館は生きもののようだ。図書館員によって生まれた赤ん坊のような図書館を、続けて図書館員と市民とがそれぞれの立場から協力し合い育てていく。大きくなった図書館と人とはともにさらに育てあう。良い図書館のある町はきっと人も豊かなんじゃないかと思う。心尽くして私たちに素晴らしい図書館を残してくれた人たちに感謝を込めて。
読了日:10月06日 著者:前川恒雄
三つの物語 (光文社古典新訳文庫)三つの物語 (光文社古典新訳文庫)感想
『素朴な人』三つの作品のなかで一番好き。大きな冒険をしたわけでもなく、何かを成し遂げたわけでもない。だけど、だからこその非凡な人生だと思う。『聖ジュリアン伝』なんという残酷な生涯。『ヘロディアス』オスカー・ワイルドサロメとはまったく別の、思いもかけなかった凄みを見せられた。
読了日:10月04日 著者:ギュスターヴ フローベール
アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
犯人が誰かわかっていても(仕方ないよね、有名な作品ですものね)犯人を指し示すサインを探しながら読むのは楽しかった。読後、もやもやは残る(どう転んでもすっきりはしないのだろう)けれど、せめて後の人々が心穏やかにすごせれば、と思う。結ばれたものもあったりして、ね。
読了日:10月03日 著者:アガサ クリスティー
素数たちの孤独(ハヤカワepiブック・プラネット)素数たちの孤独(ハヤカワepiブック・プラネット)感想
むかし、教わった先生の「数学はロマンだよ」という言葉が、この物語を読んでいると蘇ってくる。果てしなく続く自然数の並びの間から、生まれた二人の男女。数字の間に物語が生まれ、育っていく。
読了日:10月02日 著者:パオロ・ジョルダーノ

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