『グーテンベルクのふしぎな機械』 ジェイムズ・ランフォード

 

グーテンベルクのふしぎな機械

グーテンベルクのふしぎな機械

 

 

「それは1450年のこと、ドイツのマインツ市にふしぎなものが登場した。ぼろきれと骨、まっ黒なススと植物の種からできていて、茶色のコートを身にまとい、金がちりばめられている。それを作るには、鉛と錫、じょうぶなオークの木材が必要だ。」
これはなぞなぞだ。
「いったい、なんだとおもう?」と問いかけられる。答えは……表紙の絵にちゃんと描いてあるのだけれど。


本といったら、手書きの写本だった、というその時代に、グーテンベルクは、「金属の活字を鋳造する方法を発見し、その活字をつかって印刷機で紙に印刷する方法を確立」したのだそうだ。
グーテンベルクがその印刷機から作り上げたのは、隅々までが、とても美しい本で、(それが書かれたこの絵本自体がもう本当に美しいのだけれど)ほおっとため息をついてしまう。
グーテンベルクによって刷られた美しい本(聖書)の写真も載っている。
今もなお、色あせることはなく鮮明で、500年以上の時の流れに耐えてきたとは思えない。

 
本の素は、遠いところからやってくる。
集められたのはぼろきれや骨、真っ黒なススや植物の種……。
1ページ1ページが小さな宝物作りの解説みたいだ。
沢山の職人たちの手によって、沢山の工程を経て、最後に、あの見事な本になるのだよ、と言われたら……まったく魔法ではないか。


印刷機が発明されたこと、最初の頃の本は何からどのようにできていたのかを、こんなに美しい絵本で知るのはうれしいことだ。
そして、こうして生まれた本が、以後500年もの間、ほとんど姿を変えることもなく続いている。途方もない時間だ。グーテンベルクの発明がどんなに素晴らしいものだったかと思う。


訳者はあとがきで、いまや電子書籍がポピュラーになってきていることにも触れ、もし、今の時代にグーテンベルクが現れたら、と空想する。「自分が発明した技術がすたれることを嘆くどころか、目を輝かせて新しい『マシーン』をおもしろがるにちかいありません」との言葉が素敵だ。