9月の読書

9月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:4771

たのしい川べ (岩波少年文庫 (099))たのしい川べ (岩波少年文庫 (099))感想
野や森には動物がいて、町には人がいる。ときどき両者は混ざり合い(挿し絵では、物言うヒキガエルもネズミも、人間の子どもくらいの大きさに描かれる)この不思議にあいまいな境界が楽しい。移ろう季節を寂しく思いながら、今、消えずにある、この一瞬を全力で楽しもうとする動物たちが愛おしい。
読了日:09月30日 著者:ケネス・グレーアム
灰色の畑と緑の畑 (岩波少年文庫 (565))灰色の畑と緑の畑 (岩波少年文庫 (565))感想
子どもたちの間でどこでもそんなことは起こっているだろう。でも、考えてみれば、根深い問題を抱えていることに気がついてはっとしたりする。それを不発の爆弾みたいに抱えて、私は大人になってはいないか。もし名前をつけて呼ぶなら、肌の色、富と貧困、戦争など。でも、それで「ああ」と言いたくない、一人ひとりの子どもがいる。
読了日:09月28日 著者:ウルズラ・ヴェルフェル
スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)スタイルズ荘の怪事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
痛ましい殺人事件が起こったのだ。犯人は卑劣漢である。物語もずいぶんとひねくれた(凝った、ともいう)構成になっているじゃないか。それなのに、読んでいる間も、どろどろした感じはなかった。そのうえ、こんなに気持ちのよい結末が待っているなんてね。ほーっと息をつきながら、これは、故人への最高の供養だよねと、思っている。
読了日:09月27日 著者:アガサ クリスティー
ぼくは挑戦人ぼくは挑戦人感想
自分の中の(ない、なんて言えない)気づいていない差別が恐ろしい。そう考えると不安にもなるけれど、それだから、この本はわたしの肩を叩く。人の中へ行こうよ、と。「大切なのは、自分の問題として考える想像力」この想像力、人に会いたい、その人のことを知りたい、そこから始まって広がっていくのだと感じる。
読了日:09月26日 著者:ちゃんへん.,木村 元彦
ボヘミアの森と川 そして魚たちとぼくボヘミアの森と川 そして魚たちとぼく感想
釣り竿を振る彼はいつでも、ひとり(孤独)だった。その「ひとり」の充実を私は読んでいたのだと思う。彼だけがもっているその輝ける充実した世界に魅せられる。彼が釣り(その環境すべて)から得ていた精神の自由に照らされる。本はいい。私にもきっと彼の川や釣りに相当するものがあるのではないか、と知らせてくれる。
読了日:09月23日 著者:オタ・パヴェル
ほんとうのリーダーのみつけかたほんとうのリーダーのみつけかた感想
君たちはどう生きるか』の吉野源三郎は「「人間を信じる」、何度でも。戦後、荒れ果てた人心を目の当たりにしてなおそう呟いた」そうだ。この「人間を信じる」は、この本を今という時に私たちに手渡してくれた梨木香歩さん自身の言葉でもあると思う。信じて語ってくれた数々の言葉を「チーム私」はリーダーとともに大切に読んでいく。
読了日:09月20日 著者:梨木 香歩
桜のような僕の恋人 (集英社文庫)桜のような僕の恋人 (集英社文庫)感想
たくさんたくさん似た物語があると思う。だから、ちょっといいなくらいでは、満足したくない。とはいえ、印象的な細部が物語のあちこちにちりばめられていて(四季のどの章にも溢れんばかりの桜色、変わるもの・変わらないもののこと)雰囲気のある作品だった、と思う。
読了日:09月19日 著者:宇山 佳佑
老人と海 (新潮文庫)老人と海 (新潮文庫)感想
眩暈がしそうな大海原の広がりの中で自分がとても小さくなって消えてしまいそうな気がしてくるし、自分自身が大きく広がっていき海と同化するような気持ちになる。老人は勝ったのか負けたのか。たぶん勝ち負けを突き抜けたんじゃないか。もっと高いところへ。黄昏の浜辺で子猫のように戯れるライオンの夢を見る。おおらかな休息。
読了日:09月17日 著者:ヘミングウェイ
コピーボーイ (STAMP BOOKS)コピーボーイ (STAMP BOOKS)感想
『ペーパーボーイ』から六年。スピロさんとの約束を果たすためにヴィクターは旅に出る。相棒は、以前スピロさんと交わしたいくつもの会話。それから『老人と海』の数々の場面。ヴィクターの吃音が、かえって、彼が出会った人々の外皮に惑わないことを際立たせる。旅の終わりに彼が贈られたものに、胸がいっぱいになる。
読了日:09月15日 著者:ヴィンス ヴォーター
虫めづる姫君 堤中納言物語 (古典新訳文庫)虫めづる姫君 堤中納言物語 (古典新訳文庫)感想
虫めづる姫君』この物語の作者は、なんと、この姫をいきいきとかわいらしく描き出したことだろう。この物語の作者は、いったいどういう人だったのだろう、と気になる。いやいや、『堤中納言物語』の編者はいったいどういう人だったのだろう。ほとんどの物語から、はつらつとした弾力のようなものを感じる。
読了日:09月12日 著者:作者未詳
方丈記 (光文社古典新訳文庫)方丈記 (光文社古典新訳文庫)感想
人も住まいも儚いけれど、「鴨長明は、そんなつもりはないままに言葉による建物を建てたのだ」という蜂飼耳さんの言葉を味わいながら、言葉による方丈の庵をいま、わたしも訪れる。(付録の)発心集の、設計図を書く貧男のように、ここに、心を住まわせることもできる。
読了日:09月11日 著者:鴨 長明
銀河鉄道の夜銀河鉄道の夜感想
元気で時々憎たらしい子どもたちの身体を透かして小さな赤い火が見える。さびしくて美しい小さな灯。子どもにはわかりえない様々な理由で、去っていく者と置いていかれる者。さびしくても悲しくてもどうしようもない。だから、互いにせめて何か挨拶を送れたら、と思う。風が変わることで。ともに旅することで。あるいは安らかな笑みで。
読了日:09月09日 著者:宮沢 賢治
教団X (集英社文庫)教団X (集英社文庫)感想
カルトは、小さな教団から国へ。全体主義とカルトはなんてよく似ているのか。背中を逆なでするような声がどんどん高くなってくる。だけど待って。激しい声の間から聞こえてくる静かな声を聴く。まず、深呼吸しよう。まず、私の物語を確認しよう。それから、よしとページの上にもう一度戻る。
読了日:09月08日 著者:中村 文則
キバラカと魔法の馬: アフリカのふしぎばなし (岩波少年文庫)キバラカと魔法の馬: アフリカのふしぎばなし (岩波少年文庫)感想
馬や猿など、それから、ぞう、きりん、らいおん、ひょう、はげわし、わになどが人ととともに活躍する。アフリカなのだ。夜、寝る前に読んだお話は、アフリカの草原や森、山の上の風を運んできてくれた。訳者による「あとがき」で、ナイジェリアを夜行の貨物列車で旅したときのことを語っていて、その話が印象的だった。
読了日:09月06日 著者: 
アフターコロナ世代の子育てアフターコロナ世代の子育て感想
この本のタイトルにはアフターコロナとあるけれどコロナがあろうとなかろうと、二人の医師の言葉は揺るがない。子どもの傍らの大人たちへの言葉も平時と変わらない。激しく動いている世の中で、変わらず揺るがずいるってすごいことだと思う。知恵と経験とに裏打ちされた言葉が、読み手の気持ちを落ち着かせ不安を別のものに変えていく。
読了日:09月04日 著者:山田 真,石川 憲彦
脇坂副署長の長い一日 (集英社文庫)脇坂副署長の長い一日 (集英社文庫)感想
読んでいるだけで、もう最初から息が上がっているが、終わってみれば、走ったあとみたいに、こんなに気分がいい。真夜中から始まった一日の物語は、真夜中に終わるのだ。家族の安心の笑顔をぐるりと見渡しながら、ちょっと夜更かししすぎじゃありませんか、みなさん。と声をかけたくなっている。
読了日:09月03日 著者:真保 裕一
消しゴム (光文社古典新訳文庫)消しゴム (光文社古典新訳文庫)感想
あれこれの場面が何度も繰り返される。同じ線を何度もなぞった鉛筆画のようなイメージ。タイトルの消しゴム、ヴァラスがさがしていた消しゴム、あれはなんだったのか。鉛筆画の何度もなぞられた線の、そのいらない線を消していく作業をするために読者に提供されたものであったのだろうか。あるいは「〈余分の〉二四時間」を消すための?
読了日:09月01日 著者:アラン ロブ=グリエ

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