『アフターコロナ世代の子育て』 山田真/石川憲彦

 

アフターコロナ世代の子育て

アフターコロナ世代の子育て

 

 

「Ⅰ まず、感染症を知る」山田真
「Ⅱ ストレスと子どもへの影響」石川憲彦
「Ⅲ 将来の教訓と備え」山田真

の、三つの章に分かれている。
新型コロナの下、小児科、児童精神科の二人の医師による、子どもたちの傍らにいる大人たちへの助言だ。


我が子の子育て中にお世話になった『はじめて出会う小児科の本』のお浚いのような「Ⅰ まず、感染症を知る」から、
「Ⅱ ストレスと子どもへの影響」へ。
子育てをおおらかに見守ってきた二人の医師の言葉は、揺れに揺れる不安な時代にも、希望のありかを示してくれる。


子どもを育む、ということ、子どもに寄り添う、ということはどういうことなのか、もう一度考えてみたい。
低学年以下の子どもなら、親がやることは、(子どもの柔軟性を信じて)子どもをほうっておくこと。
思春期以降の子どもたちについては、「感染症の流行がなくても、将来の不安というのはもっと陰湿なかたちで若い人を襲っていたでしょう」と前置きして、「将来が見えなくなる不安を体験すること」の大切さを、経験を踏まえて語る。
いろいろな事情で困っている若い人たちがいることもたしかであるけれど、「それを悲劇として見る大人の人間としてのもろさ」のほうが問題だと考えるという。
そして、大人のストレスについての話。
耳の痛い言葉もあったけれど、わたしは自分のあれこれの心配はどこから来ていたのかな、と考えている。


「Ⅲ 将来の教訓と備え」は、感染症がはびこる今、何が起きているのか、ふりかえることから始める。
新型コロナ感染者への差別は、自己責任と「わからない」不安から生まれる。
何がどこから、どのように発生して育っていくのか、順を追って考えていけば、鎮める道も開けてくるように思う。
また、医療崩壊はコロナ以前から事実上起こっていたことだと、いくつもの項目をあげて、語る。
平時から気をつけてみていれば、どれもわかっていたはずのことばかりだった。
感染症は、隠れていたもっと怖いものを、人の中から引っ張りだして見せたのかもしれない。
のど元過ぎたときに熱さを忘れる愚かさを繰り返さないために、いま、何をすればよいのだろう。


この本のタイトルにはアフターコロナとあるけれど、コロナがあろうとなかろうと、二人の老医師の言葉は、揺るがない、と感じている。
子どもの傍らの大人たちへの言葉も、平時と変わらない。
激しく動いている世の中で、変わらず揺るがずいるって、すごいことだと思う。
知恵と経験とに裏打ちされた言葉が、読み手の気持ちを落ち着かせ、不安を別のものに変えていく。