『せん』スージー・リー

 

せん

せん

 

 

 

まっ白な紙に、くるくると、えんぴつで線を描いていく。
見える線も見えない線も、くるくると、一筆書きのように繋げて描いていく。
大きく腕を動かして、自由に。
すーっとナナメに線を引っ張って、くるくる、またくるくると輪を描き、右へ左へ、上へ下へ。
絵本の白い画面いっぱいに、鉛筆描きの線は広がっていく。


鉛筆が躍る。独特のリズムが生まれる。音楽が生まれる。気持ちがいいな。
……あれ、赤い帽子と赤い手袋のスケーターが現れた。
白い画面のなかで、小さな帽子と手袋の赤が、美しい。
いつのまにか、ここ、紙の上じゃなくて、氷の上になっている。
線は、このスケーターが氷の上につけたトレースだ。
文字のない絵本の画面のなかで、スケートする少女(少年?)の靴の下から、静かでリズミカルな音楽が聞こえてくる。


紙は氷になり、氷は湖になり、沢山の子どもたちが滑っている。
スケートを楽しむ子らの歓声が響いてくる。
岸辺には裸樹が並び、奥へ、奥へ。
はるかな空をV字になって、鳥たちが行く。
そして、すべては、また絵の中へ。
気持ちよく絵の中におさまっている。