11月の読書

11月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2789

若い兵士のとき (改版) (岩波少年文庫)若い兵士のとき (改版) (岩波少年文庫)感想
「ぼく」は、17歳で志願して入隊し、兵士となる。訳者あとがきに、ドイツで出会った著名な研究者の言葉が紹介されていた。「リヒターはあの三作を書いて、筆を折っている。あれはそういう作品なんだ」「そういう」に込められた、言葉にならない言葉を、わたしはちゃんと受け止められているだろうか。
読了日:11月24日 著者:ハンス・ペーター・リヒター
ぼくたちもそこにいた (岩波少年文庫)ぼくたちもそこにいた (岩波少年文庫)感想
少年たちの日々のちょっとした一コマがまぶしかった。あるいは冒険物語を読んでいるような弾むような喜びさえ感じた。でも、それは本当にわずかな時間にすぎず(そんな弾むような時間かあっただけに)彼らの立ち位置や見つめる方向を思い、いっそう重苦しい気持ちになった。彼らは素直に、弾むようにハーケンクロイツの下に馳せ参じた。
読了日:11月23日 著者:ハンス・ペーター リヒター
あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 (520))感想
普通でいようとすることはもろい。賛成でも反対でもない、静かに、賢く生きていこう……そんなことができるのだろうか。激しい嵐に飲み込まれる、足をすくわれる。いつのまにか嵐の中央にいる。そんなこと、本当は自分は求めていなかったはずなのに。自分はこの物語の誰に似ているだろうと考えてしまう。どの人も惨めで不幸にみえた。
読了日:11月22日 著者:ハンス・ペーター・リヒター
戦下の淡き光戦下の淡き光感想
第一部が夜の世界なら、第二部は明るい昼間だ。(第二部の)チェスの話が、「僕」のあの一年間に重なる。完全に閉ざされた一年間、わかっていることもいないことも、こつこつ築き上げつつあることも一瞬に失われ、二度と再び開かれることはなかったが、それはやはりひとつの、味わうべき「絶頂」と思う。
読了日:11月20日 著者:マイケル・オンダーチェ
猟人たちの四季―極東ロシア・アムールの動物たち猟人たちの四季―極東ロシア・アムールの動物たち感想
物語はどちらかと言えば素朴で驚くような展開はさほどないと思う。一つ一つのエピソードは起こった出来事よりも言葉の通じない自然や動物たちへ寄せる静かな敬意がにじみ出てくるようで、ユーモアのある場面でさえも、厳かな気持ちになるのだ。殺される動物への中途半端な同情の言葉が一切ないこともよかった。猟師たちも森の一部だ。
読了日:11月16日 著者:フセーヴォロド・P. シソーエフ
物語 たくさんのお月さま (児童書)物語 たくさんのお月さま (児童書)感想
姫は月をとってほしい。月とはどんなものかなど、王様にはさっぱり興味はないみたい。ただ愛しい娘がほしがっているからには、とってやりたいのだ。このしょうもない親ばか(いっしょうけんめい親ばかで)好きだ。お姫様、月は手に入れたかな。その答えの一部が、タイトルの「たくさんのお月さま」である。ふわりと心軽くなる。
読了日:11月14日 著者:ジェームズ・サーバー
天使が見たもの-少年小景集 (中公文庫)天使が見たもの-少年小景集 (中公文庫)感想
どの物語も、どんよりと淀んだような空気が満ちている。だけど、どうしようもない父子の斜め下あたりに、寂しいような温いようなものがあるのを感じる。やりきれない気持ちのなかで、ふと目に入ってきた、どうってことのない景色が、妙に鮮やかで忘れられなかったりもする。
読了日:11月13日 著者:阿部 昭
ゾウゾウ感想
「ゾウはむれで生活し、家族の絆が強い、感情の豊かな生きものです。もし、ゾウが元気でふえていくことをのぞむなら、わたしたちはゾウを大切にし、ゾウの生きる場所を守っていく努力をしなくてはなりません」私は、絵本のなかにいる小さな男の子の姿に心揺さぶられる。この子はこうして本を読んでいるのだ。彼がここにいる幸せ。
読了日:11月10日 著者:ジェニ デズモンド
森と私とフクロウたち (1981年)森と私とフクロウたち (1981年)感想
著者は、モリフクロウの幼いみなしごに出会い、手許で育児をすることになった。六年のあいだに四羽。豊富な挿絵は、フクロウへの愛情に満ちている。巻頭の辞が好きだ。「チッピー(三代目)にささげる。もしその助力がなければ、本書の完成は半分の時間ですんだであろう」
読了日:11月07日 著者: 
夢見る帝国図書館夢見る帝国図書館感想
なぜ図書館なのかといえば、たぶん、図書館が、ありとあらゆるものにとっての出会いの場所だからだ。「夢見る帝国図書館」の物語は、遠い過去から、現在へ向かってゆっくりと進んでくる。「わたし」の物語は、現在から過去へとゆっくりと遡上していく。二つの物語が、どこかで出会い、握手する。あいさつのことばは、「きわこ」だ。
読了日:11月03日 著者:中島 京子
トリック (新潮クレスト・ブックス)トリック (新潮クレスト・ブックス)感想
世紀をまたいで、一つのトリックが仕掛けられる。トリックが、本物の奇跡になる。ほんものの魔法になる。トリックとはったり。これを奇跡に変える、声なき呪文があるとしたら、こんな言葉ではないだろうか。「日常生活よりもより真実に近いなにかを信じたいという願望」これが祈りかもしれない。
読了日:11月01日 著者:エマヌエル ベルクマン

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