『アルテミス・ファウル(2)北極の事件簿』 オーウェン・コルファー

 

アルテミス・ファウル 北極の事件簿 (角川文庫)

アルテミス・ファウル 北極の事件簿 (角川文庫)

 

伝説的犯罪一家の御曹司で、超天才少年アルテミス・ファウル二世は、13歳になっていた。
行方不明だった(一説亡くなった、とも言われていた)父がみつかった、という。しかも、重傷を負ってマフィアの手に落ちたらしい。
前巻で、妖精を誘拐して身代金をせしめようとしたアルテミス、今度は、身代金を要求される側になってしまった。


一方、地下の妖精国でも、事件が起きていた。
ゴブリンの無法者ブワ・ケル団が、どうやら、人間と違法な取引(そもそも人間と接触すること自体厳禁)をしていることが発覚。その人間とはいったい何者なのか? 
前巻でアルテミスと丁々発止と渡り合った地下警察隊のホリー・ショート大尉とその上司ルート司令官は、アルテミス・ファウル以外にありえない、と確信する。
そして、再び、妖精と人間とが顔を合わせる。


そうこうしているうちに、獅子身中の虫なども動きだし、あちらもこちらも目を離せない状況だというのに、あちらの舞台、こちらの舞台を寸断しながら、フルスピードで物語は進んでいくのだ。


フルスピード。
事情は込み入っているというのに、活劇場面の連続で、みんなちゃかちゃか駆け回っている。
となると、どういうことが起こるか?
頭でっかちのアルテミス坊ちゃまが、ほとんど役立たずになってしまうのである。
それなりに超天才の頭脳が活躍する場面はあるのだが、前巻の華々しさには到底及ばず、だ。
アルテミスの冷徹な悪者ぶり(そうはいっても、マイルドな部分は前巻でもちらほらとみせてくれてはいたのだけれど)がだいぶ影をひそめ、少々丸くなりすぎてしまったため、魅力が半減してしまったようにも感じる。
この物語の魅力は、こわもての連中がちらりとみせる優しさだと思うのだけれど、それは、あくまでもちらりと、であるから心に残ったのに。残念なことだ。


むしろ、脇役たちの活躍が目覚ましくて、ことに妖精ホリ―は、ほぼ主人公ではないか。それも楽しかったけれど。
(だけど……魔法は、ときどきずるい! と思ってしまう)