『アルテミス・ファウル(1) 妖精の身代金』 オーエン・コルファー /大久保寛(訳)

 

アルテミス・ファウル 妖精の身代金 (角川文庫)

アルテミス・ファウル 妖精の身代金 (角川文庫)

 

アルテミス・ファウル二世は、伝説的な犯罪一家ファウル家の御曹司である。
当主である父が行方不明になって以来、傾いてきている家(といってもまだまだかなりの資産家)を立て直すべく、アルテミスは、妖精を誘拐して、身代金として妖精の黄金を手に入れる計画を立てる。


アルテミスは、わずか12歳にして天才少年、しかも、肝のすわった悪党だ。
彼を補佐するのは従者(と同時に父的存在であり友である)バトラーと、その妹のジュリエット。
「アルテミスは、まだ子どものように妖精を信じつづけているうえ、魔法を悪用してやろうというおとなの考えもあわせもっている」
という、このアンバランスさが、なかなかに魅力的だ。


アルテミスは、本当に妖精が存在することを突き止める。
そして、用意周到な計画のもと、エルフを一人誘拐することに成功するが、彼女ホリー・ショートは、地底にある妖精国の警察偵察隊の大尉で、根性も勇気もあるし、かなりの切れ者だった。
そして、彼女の後ろには、人質を奪還しようとする警察隊の精鋭たちがついている。


妖精、といっても、これが、びっくりするほどハイテクで、ある妖精をして、「人間のテクノロジーは、われわれより十億年遅れている」と言わせるほど。そのうえ、彼らは魔法を使える。姿を隠し、催眠術を使い、空を飛び、そして……癒す。
どう考えても人間が太刀打ちできるわけがない。彼らが、地下に移り住み、われわれ人間を放っておいてくれることにしたのは、なんという僥倖よ、と思いたいところであるが、そこで、(正々堂々とは言えないが)喧嘩を売ってしまうのがアルテミス。互角に戦ってしまうのがアルテミス。


互いに決して理解できるはずのない同士が、油断ならない相手、と警戒しつつ、ふとみせる優しさなんかに、ちょっとほろっとさせられて、そのそばから甘かったわ、と気づかされ……なんとも忙しい物語だった。


ところで、各ページの左右の余白には、不思議な模様が描かれている。ぼんやりときれいだな、と思って読んでいたが、これ、妖精文字で書かれた文章なのだ。
解けるか? 解けそうな気もするけど、難しい(^-^;
しかし、「アルテミス・ファウル 妖精文字」で検索したら、解読されたかたがいるのです。すごい。