『ピンクとグレー』 加藤シゲアキ

 

ピンクとグレー (角川文庫)

ピンクとグレー (角川文庫)

 

 

小学校の頃からいつでも一緒だった、親友同士のごっちとりばちゃん。
二人が芸能界(の片隅)に籍を置くようになったのは、小さなきっかけからだが、二人一緒にやっていけるから、というのも理由のひとつだった。
いま、ごっちは大スターだ。
いまだ片隅に甘んじているりばちゃんにとってごっちは遠い存在になってしまった。
二人、連絡をとりあうことがなくなった二十歳のころ、何があったのか。そして、二人のその後は、どのように離れ、また合わさっていくのか。
彼らが出会った日へと物語は巻き戻される……


スタンド・バイ・ミー吉田拓郎尾崎豊……二人の少年たちが駆け抜けていく日々を彩るなつかしい映画のタイトルやスターの名前は、輝かしくて、暗くて、暗い背景があるからこそ、明るく輝いている。
彼らの過去の物語を読むのは、楽しかった。何があったとしても、その都度の、さまざまな彩度の笑顔が印象に残るのだ。どんな笑顔であれ、いつも二人肩寄せ合っていた。


巻末の著者インタビューのなかで、「ごっちとりばちゃんは同一人物と言っても過言ではないくらい……」という言葉を見付け、あ、そうか、と納得した。
もともとひとりであるべき人間が、二人という姿に分裂したのなら、元通り、一つに戻せないものか。
この物語は、戻す作業なのだと、そう思った。


けれども、その戻し方がわたしには納得できない。
「オニアンコウって知ってる?」物語の中で彼は問いかける。
ごっちもりばちゃんもよく似ていると思った。
互いに補いあうことなんてできないくらい、どうしようもなく。
それでも、いや、それだからかな。裏切られたような気持ちでいる。
裏切るなら、もうひとつ裏切ってほしかった。まさかの脇道をみつけだしてほしかった。