4月の読書

4月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:2485

ファミリー・ライフ (新潮クレスト・ブックス)ファミリー・ライフ (新潮クレスト・ブックス)感想
家のなかに、兄がいる。意識のない兄が。ときにユーモアさえ交えて描写されるその存在は、ずーんと重たい。鬱陶しくて愛しい。だけど、現実と自身との間に、一つの静かな存在が立つ。それは「言葉」。あまりに静かで、あまりに恥じらいながら、なにかが微妙に変わりつつある、と感じる。それが為したこと、為しつつあることは、きっと想像を超えていく。
読了日:04月29日 著者:アキール シャルマ
新編 マキちゃんのえにっき新編 マキちゃんのえにっき感想
子どもをめぐる日々はぽかぽかの日だまりばかりではない。これは、マキちゃんをとおして、おかあさんの気持ちを書いた本じゃないか。感じるのは、おかあさんの孤立感、閉塞感。文も絵も、時々どきっとして、やりきれなくて…やっぱり、やっぱり愛おしい。小さかったマキちゃんが、ぐんぐんぐんぐん大きくなって、この本の後書きに変わる「てがみ」なんか書いているからだ。
読了日:04月25日 著者:いせ ひでこ
ジュディ・モード、世界をまわる! (ジュディ・モードとなかまたち)ジュディ・モード、世界をまわる! (ジュディ・モードとなかまたち)感想
新しい友達ができた。八日間で世界をまわる企画もある。でもちょっと問題が。ジュディ・モードの世界は見覚えのある世界だ。わかるわかるって仲間とおしゃべりをしているような感じだ。読み終えて、作者と挿画家の献辞と「この本にでてくる人たち(登場人物紹介)」も、もう一度読む。物語の外のお楽しみ。本作りに関わった人々の楽しい謀の現場を押さえたようではない?
読了日:04月23日 著者:メーガン マクドナルド
庭園の中の三人/左と右 (レクチャーブックス◆マーシャ・ブラウン)庭園の中の三人/左と右 (レクチャーブックス◆マーシャ・ブラウン)感想
日本での二つの講演の記録。それにしても、誠実な仕事をしようとする才能ある作家たちを苦しめるのは、流行や商業主義。流されやすい自分を振り返って、ああ、耳が痛いことだ、と思う。子どもたちをも市場と見なされる悲しみ。たくさんの左と右の話の後に出てきたのは、左と右は必ずしも逆を向くものではない、ということ。「融合」という言葉が「よろこび」とともに語られる。
読了日:04月19日 著者:マーシャ・ブラウン
ポケットのなかの天使ポケットのなかの天使感想
「幸運ね、わたしたち。こんな天気のいい日に、こんなにすてきな世界にいられるなんて」美しいことばだと思う。そこは特別な場所でも特別な時間でもない。当たりまえにある自分を巡る世界。ここにいられる喜びを、幸運をしみじみと知らせてくれる存在があなたなら、天使、わたしのところにも来てくれたらなあと思う。いいえ、天使はもうこのポケットの中にいるのかも。
読了日:04月18日 著者:デイヴィッド・アーモンド
もちろん返事をまってます (新しい世界の文学)もちろん返事をまってます (新しい世界の文学)感想
手紙は正直だ。文通が続くうちに、二人の手紙が少しずつかわっていくのを、感じている。当然、自分にできて相手にできないことがあること。でも、相手にできて自分にできないことや、相手が持っていて自分が持ち得ないものがたくさんたくさん、あること。そういうことがだんだんわかってくることで、手紙が変わってきたのだ、と思う。若い二人の弾力のある友情が眩しい。
読了日:04月17日 著者:ガリア ロンフェデル・アミット
許されざる者 (創元推理文庫)許されざる者 (創元推理文庫)感想
忘れられないのは最後の章。そこで何が起こったにしても。関係者たち一人一人が、それぞれの茫漠のなかにとにかく顔を上げて足をふみだす一歩。それを思うと胸がいっぱいになる。ラーシュが子どもの頃『名探偵カッレくん』を愛読書にしていたという件が好き。彼が育った農場を半ズボンにカギ裂きを作りながら駆けていく少年の姿が見える。その姿を思うと自然に微笑んでしまう。
読了日:04月13日 著者:レイフ・GW・ペーション
ウールフ、黒い湖ウールフ、黒い湖感想
訳者あとがきの中で、後年の作者の言葉が引用されている。「ぼく」と作者の思いが重なる。作者の思いを鏡にして、わかるべき事柄をわからないまま成長させられ、わからないまま愛し奪われた「ぼく」を、痛ましく思う。美しい描写のひとつひとつを振り返る。それは、とても美しくて、そこにいる人間たちそれぞれにとってそれぞれ違った形で、とても残酷だと思う。
読了日:04月10日 著者:ヘラ・S・ハーセ
みすず 2018年 04 月号 [雑誌]みすず 2018年 04 月号 [雑誌]感想
繁内理恵さんの連載『戦争と児童文』第一回『小さきものへのまなざし、小さきものからのまなざし』朽木祥作品について。繁内理恵さんの評論を読むことは、物語を一冊堪能した満足感がある。取り上げられた作品一作一作と読者とを、さらなる対話に向かわせてくれる。取り上げられた作品がますます大きな意味をもった本になる。まず今回、取り上げられた作品を全部味わい直したい。
読了日:04月09日 著者:
世界はまるい世界はまるい感想
言葉や句読点がすっきり整理された文章に慣れていたから、この本を読み始めたとき面食らった。何の話をしているのかわからなくなって、このままでは道にまよってしまうかもしれない。と思った。でも、それは悪い事なの?道に迷ってもいいじゃない? ときには、道に迷ってもいいの。道に迷うって楽しいじゃないの。だから、楽しんで、時々は音読したり歌ったりして読みました。
読了日:04月06日 著者:ガートルード・スタイン
とうに夜半を過ぎて (河出文庫)とうに夜半を過ぎて (河出文庫)感想
草の上を駆けていった少年の足音を聞いた気がしたのだけれど、読み終えてみれば、少年なんて最初からそこにはいなかったのかもしれない、と思う。でも、遠くの方から微かに草刈機械のぶーんという音が聞こえてこないだろうか。刈りたての草の甘いような匂いがしないか。それだけで満ち足りた気持ちになる。他に確かなものは何もなくても。それでいいんだ、それがいいんだと思う。
読了日:04月05日 著者:レイ・ブラッドベリ

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