3月の読書

3月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:1737

父の生きる (光文社文庫)父の生きる (光文社文庫)感想
伊藤比呂美さんと父との壮絶な三年半。それなのに、その奥深くに、何かゆったりとした明るいものを感じる。逝くものと残されるものとがともにあたる灯り。二つの大きな川が結ばれ、絡まり合って大きな環になっていく。介護、見守り、看とり……そうだっただろうか。そうだったけれど、それだけじゃなかった。それたけじゃなかったものが、読後、爽快感となって、心に残る。

読了日:03月30日 著者:伊藤 比呂美
朝の少女 (新潮文庫)朝の少女 (新潮文庫)感想
いつの世でも、どこの場所でも、変わらないものの、余分なものをざっくり削ぎ落とすと、こんなに美しく、輝かしいものがあらわれるのかと、物語の世界に魅了された。幸せな読書だったはずなのだ……

読了日:03月28日 著者:マイケル ドリス
テディが宝石を見つけるまでテディが宝石を見つけるまで感想
子どもたちと犬と三にんのなかにある静かな共感が、この場所に、嘗ての幸福な光景とは別の、もうひとつの光景をつくりあげている。それぞれが抱えていた「ちっちゃな真実」が、空気の中に溶けだして、別の、柔らかくて気持ちの良いものに変わっていくようだ。やがて、家の中のものたちは、外にでていくだろうと思った。だから、このささやかな時間がことさらに愛おしい。

読了日:03月24日 著者:パトリシア・マクラクラン
ジュディ・モードの独立宣言 (ジュディ・モードとなかまたち)ジュディ・モードの独立宣言 (ジュディ・モードとなかまたち)感想
ジュディの本五冊目を読んでから、いつのまにか十年。不機嫌モードが最高にかわいい(?)ジュディに再会。いつもは子どもたちの後ろで見守りに徹していた両親が粋でかっこいいことをして見せてくれた。ドット先生のさりげない助言がジュディを「あんぽんたんな理由で」歴史の本に載せられなかった女の子の話に出会わせた。子どもの後ろにいる大人も素敵だ。

読了日:03月22日 著者:メーガン マクドナルド
波紋 (岩波少年文庫 (512))波紋 (岩波少年文庫 (512))感想
幼い少女が、水に小石を投げ、水面に波紋ができるのを見ていた水盤が、物語のおしまいにもう一度あらわれる。少女時代に彼女を育んでいた美しいものも静けさも、彼女をそのままよしと見守るものたちも、姿は見えなくても、いつでも、動かずに、変わらずにそこにあった。激しい嵐は、表面を吹くが、どんなに激しい力も、底の水を動かすことはできなかった。いまも、これからも。

読了日:03月18日 著者:ルイーゼ・リンザー
ノーラ・ウェブスター (新潮クレスト・ブックス)ノーラ・ウェブスター (新潮クレスト・ブックス)感想
何だか苦手な人だ。実際にノーラのような人に会ったら、注意して近づかないように気をつけよう。そう言いつつ、彼女の人生に惹かれるのはなぜ。ノーラの厭らしさは自分にもある。だから、放っておきたくないと思うのかも。それから、主人公のなかに、一点二点、はっとするほど輝かしいものがあることを知る。追いかけ、育て、磨いていく、その過程の充実に、ほっと息をつく。

読了日:03月11日 著者:コルム トビーン
ゆうかんな猫ミランダゆうかんな猫ミランダ感想
ローマは火の中である。蛮族に襲われた町で、飼い主一家とはぐれたミランダと娘猫プンカは、途中次々に出会う赤んぼ猫たちを助けながら、ローマを脱出する。途中待ち受ける犬の群れ、地下から聞こえる恐ろしい声、そして、33匹の赤ん坊に飲ませるお乳をどう手配するか。大人猫だって腹ペコである。実はミランダは、ただゆうかんであるだけではなく、大した策士でもあったのだ。

読了日:03月09日 著者:エレナー・エスティス
アフリカの民話集 しあわせのなる木アフリカの民話集 しあわせのなる木感想
たくさんの動物たちやバオバブなど独特の植物が現れるお話は、おおらかなものが多い。紙に書かれた文字を読んでいるにしても、もともとは語られた言葉なのだと思いながら読むと、文字の間から、言葉の躍動(の片鱗)が微かに伝わってくるようだ。その土地の言葉で語られるおはなしを耳から聞くとき、「読む」こととは別の、言葉の不思議に触っているのだと思う。お話聞きたいな。

読了日:03月04日 著者:島岡 由美子,ヤフィドゥ・A. マカカ,8人のティンガティンガアーティストたち

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