『ゆうかんな猫ミランダ』 エレナー・エスティス(文) エドワード・アーディゾーニ(絵)

ゆうかんな猫ミランダ

ゆうかんな猫ミランダ


むかしむかし、ローマの元老院議員の家で、ミランダという名前の黄金色の猫が、七歳の女の子クラウディアと一緒に暮らしていました。
穏やかで幸せな日々でした。
ところが、あるとき、ローマは蛮族の襲撃にあい、クラウディアたちは急いで市外に避難しました。
壺の中に隠れていたミランダと娘猫のプンカは、置いてきぼりを食ってしまったのでした。
ミランダは、プンカと二人で、炎と煙に包まれた町を脱出します。


ミランダは、このあたりでは、数々の武勇伝をもつ勇敢な猫だった。
ミランダ自身、産み月を迎えた体ではあるけれど、途中、逃げ遅れた赤んぼ猫を次々に助け、最後には三十三匹のこねこをひきつれての大移動。
ワンダ・ガアグの絵本『100まんびきのねこ』を思い浮かべる。
しかし、ローマは火の中である。
途中待ち受ける犬の群れ、地下から聞こえる恐ろしい声、そして、33匹の赤ん坊に飲ませるお乳をどう手配するか。大人猫だって腹ペコである。
実はミランダは、ただゆうかんであるだけではなく、大した策士でもあったのだ。
逆境のなかから、チャンスをみつけて、上手に拾い上げる。
そして、これまで、まるきり甘ったれのあかちゃんだった娘猫のプンカが、よき相棒に育ってくれたことも、頼りになることだった。


プンカの成長は目覚ましかった。
これまで我が子を独り立ちさせることができなかったミランダ母さん、ちょっと過保護?
いやいや。
むしろ、大切な娘よ、と愛情のありったけで育てられたから、時が来たとき、プンカ、持ち前のおおらかさを強みにした、すてきな大人猫になれたのかもしれない。


エドワード・アーディゾーニの挿絵がとってもよい。
表紙のミランダ猫の、なんと気品と威厳に満ちた姿よ。