2月の読書

2月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1774

あさがくるまえにあさがくるまえに感想
嘗て、『トムは真夜中の庭で』で、13番目の時計のチャイムが特別な時間の訪れを告げたように、いま、「まじない」のような言葉が特別の一日の始まりを告げる。雪に覆われた町は、扉の向こうの秘密の庭のようだ。静かな喜びが、胸の奥から力強く上ってくる。この絵本を開いている時間がわたしの特別な時間だ。宝物のありかを教えてくれる時間。
読了日:02月25日 著者:ジョイス・シドマン
ほら、死びとが、死びとが踊る: ヌンガルの少年ボビーの物語 (オーストラリア現代文学傑作選)ほら、死びとが、死びとが踊る: ヌンガルの少年ボビーの物語 (オーストラリア現代文学傑作選)感想
オーストラリアには一時期「友好的なフロンティア」と呼ばれる時代があったそうだ。ボビー少年を中心に描かれるその時代の人々の姿、とりまく自然の雄大さ、美しさに魅了される。神話のよう、詩のよう。ああ、鯨の歌。入植者の数がヌンガル(アボリジニの種族)を上回るころ、いろいろなことが変わり始める。友好的なフロンティアって本当にそんなものがあったのかな。
読了日:02月20日 著者:キム スコット
がんぎの町から―随筆集がんぎの町から―随筆集感想
雪国の暮らしの重荷をそっくり背負いながらも、季節ごと、朝夕の景色や暮らしの移り変わりを楽しみ、あちこちに眼をくばり、耳を傾けて過ごしているであろう著者の、生まれ育った町に対する思いの深さ、感じる心の豊かさ。自分の居場所にしっかりと根を張り、どっしりと立つ人は、凛と美しい。その根元に、読者をいつでも好きな時に迎えて、憩わせてくれるような気がする。
読了日:02月16日 著者:杉 みき子
ちいさないきものと日々のことちいさないきものと日々のこと感想
この小さな本のなかには、一緒に暮らしたちいさないきものたちへの15人の思いがつまっている。日々の愛おしさを人一倍感じさせてくれるのは、ちいさないきものたちだ。ちいさないきものといっしょに暮らすことを決めたとき、ひとは、その別れとも一緒に暮らすことを決めたのだ、と思う。そういう思いが集まって、本のなかに柔らかい隙間をつくっている。
読了日:02月12日 著者:もりのこと+渡辺尚子
ダッハウの仕立て師ダッハウの仕立て師感想
弱いものを食い物にする悪党、戦争、偏見が、そして偏った司法制度が、少女を追い込んでいく。圧倒的な孤独、闇の中、死にとりつかれながら、なんとか生を作り出そうとし、その生をなんとか守り抜こうとすることが、彼女を生かす。生き抜け生き抜けと願いながら、丁寧に綴られる彼女の日々の恐怖にドキドキした。きっと沢山のエイダが、本当にいた(いる)にちがいない。
読了日:02月08日 著者:メアリー チェンバレン,Mary Chamberlain
椋鳥日記 (講談社文芸文庫)椋鳥日記 (講談社文芸文庫)感想
本の中をゆっくりと散歩しているような読書だった。あちらの町角、こちらの袋小路に迷い込み、あるいは森や水辺で佇む、ポットのお茶を飲みながら、景色や通り過ぎる人々をぼんやりと眺める。そんな気持ちでいたら、いつのまにか、未読のページがなくなっていた。
読了日:02月04日 著者:小沼 丹
ワニの町へ来たスパイ (創元推理文庫)ワニの町へ来たスパイ (創元推理文庫)感想
おとなしく、目立たないようにして身を隠す必要のあるスパイが、もぐりこんだ小さな町で、五年前の殺人事件を暴くことになってしまった。そこで出会った最高にご機嫌なおばあちゃんたち(隠し事あり)と、とびきり素敵なチームになっていくのが楽しくて仕方がない。「こんな友達がいたら、小国だって制圧できる」に、心からの拍手を贈ります。
読了日:02月01日 著者:ジャナ・デリオン

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