『ちいさないきものと日々のこと』 もりのこと+渡辺尚子

ちいさないきものと日々のこと もりのこと文庫1
編集:もりのこと+渡辺尚子 / 挿画:片桐水面 / 装丁:丹治文彦
発行所:もりのこと / 発行日:2018年2月1日


犬、猫、亀……
この小さな本のなかには、一緒に暮らした(家族として、あるいは、家の外で出会った)小さないきものたちへの15人の思いがつまっている。
もう会うこともできない、いきものの思い出や、今いっしょにいるいきもののことなど。


「うしなう」ということを、この本の全体から、感じた。
今現在、元気で自分によりそっていてくれるいきものたちは、いつまでもずっと一緒にいられないのだということを、人たちは日々のくらしのなかで意識している。
それだから生まれる慈しみ。
いきものに対してだけではなく、いっしょにいる時間に対する慈しみ。


私は、ずっと昔に死んだ犬のことを思い出した。
いつになっても、不意に思いだして、胸のあたりがぎゅうっとなる。
何年たっても、別の犬(この子も大事)とくらしていても……


この本のなかに、いなくなってしまったあの犬がいるわけではない。
でも、この本のなかに、その犬のことを思い出す私の気持ちの居場所があるように感じた。
15人の綴る言葉のどこに、どうして、そういう場所ができるのだろう。


「生きものとの暮らしは、さもない毎日が楽しいし、いなくなってからもまた、思い出すことがたくさんあって、良いものだと思う。」
あとがきの中にある編者の言葉。


日々の愛おしさを人一倍感じさせてくれるのは、ちいさないきものたちだ。
ちいさないきものといっしょに暮らすことを決めたとき、ひとは、その別れとも一緒に暮らすことを決めたのだ、と思う。
そういう思いが集まって、本のなかに柔らかい隙間をつくっているのかもしれない。